ボーノ! グラッツェ! レモンソルベ!
実はこのプローチダ島、映画『イル・ポスティーノ』の舞台にもなった島で、眼下に見下すコッリチェッラ地区に、主人公の郵便配達員が恋に落ちたカフェも実在しているとのこと。せっかく登ってきたところですが、港まで降りていくことに。
イタリア語で、ここが『イル・ポスティーノ』のロケ地であることを示す看板を発見。ただ、それほど思い入れのある映画でもなかったので、写真だけ撮って隣のカフェ「Felice Mare」へ。ここで食べた名物レモンソルベは、人生でベスト3に入るほど美味でした。隣のカプリ島と比べたら料金も良心的です。感激して、店員さんに「ボーノ! グラッツェ! 」と連呼してしまいました。
パステルカラーの建物が可愛らしく、ただ散歩するだけでも楽しい島。イタリアの人はのんびりしていて、カフェに入ってもなかなかオーダーを取りに来てくれないことがままありますが、プローチダ島ではいくら待てども一向に来ず(笑)。しびれを切らしてこちらから呼びに行ったほどでしたが、そこは島時間ということでご愛嬌。今まで訪れたイタリアの町の中でも、特にイタリアらしさを感じる町でした。
地中海の島というと、イビサ島やカプリ島みたいに、セレブがバカンスを過ごしに来るイメージがありますが、ここはそんな喧騒とは無縁。静けさや素朴さに、きっと居心地の良さを感じてもらえると思います。
今回は日帰りの旅だったので、すぐにナポリへ戻ることに。もっとゆっくりすれば良かったなぁと、せっかちだった旅程を後悔。
島旅はのんびり予定を組むに限ります。名残惜しさを覚えながらも、そういうときに限って、帰り道はまったく迷うことなく、フェリー乗り場へ着いてしまいました。
ナポリに戻るフェリーの小窓から眺めたプローチダ島の景色は、額縁におさまった絵画のよう。「いつかまた訪れたいなぁ」。景色を眺めながらそんなことを考えると、急に心が締め付けられるようにノスタルジックな感情に。
名残惜しそうに、いつまでも島を眺めていた子供たちもまた、同じ気持ちだったに違いありません。
そんな切なさもまた島旅の魅力。新たな出会いに期待して、次の島に向かいます!
伊澤慶一●1981年生まれ、一児の父。出版社勤務時代には『地球の歩き方』を始め、NY、LA、パリ、ベルリン、モロッコなど世界中のガイドブックを制作。60カ国以上の渡航歴を持つが、いちばんのお気に入りはハワイ。