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ゴミが減れば、人は町をもっと好きになる

——「かながわプラごみゼロ宣言」は由比ガ浜に打ち上がったクジラがきっかけでした。
そのクジラを見ることはできなかったんですが、なぜクジラが由比ガ浜に打ち上がったのかについて、理由をひと言で表すのは難しいと思います。しかし近年は相模湾の近海でマグロや本ガツオが釣れたり、一方でアジやサバがいなくなったりと、近隣の人たちは海洋環境の変化を如実に感じています。
そのためクジラが打ち上がったこと、そして胃のなかからプラスチック片が見つかったと聞いて、「あ、やっぱりな」と思った人は多いでしょうね。そういう意識の高まりもあって、葉山は「はやまクリーンプログラム」を現実化できたと思っています。
——プログラムは行政・町民・民間企業の協働によるものですね。
町としては公共施設の売店・自動販売機でペットボトル飲料の販売をやめ、職員にマイボトルの使用を推進するなどの働きかけをしています。
町民の皆さんには、飲食の提供を伴うイベントを町内で行う際には、ペットボトルの会場持ち込みをやめてもらったり、マイ箸・皿・コップを持参してもらうなどの協力をお願いしています。
「はやまクリーンプログラム」によって設置された給水スポット。
「はやまクリーンプログラム」によって設置された給水スポット。ウォータースタンド社のサーバーが採用されている。
そして町内の各事業者にはレジ袋やプラスチック容器の削減に向けた取り組みをお願いしたり、また公共施設にウォーターサーバーを設置するといった施策を通して、ペットボトルごみ削減、マイボトルの普及を狙っています。
こうした取り組みから、プラごみゼロの実現やSDGsの目標達成を目指そうというのが「はやまクリーンプログラム」です。
——ペッドボトルの飲料を売らないことに反発はありましたか?
ちょこちょこありましたし、今でもあります。ペットボトルの代わりに缶の飲料を販売していますが、飲みきれないとか、ペットボトルでもきちんと捨てれば良いのではないか、といった声ですね。
——事業者ではなく利用者からなんですね。
企業側からは「仕方ない」といった諦めの声が届いていました。ただ利用者のなかでも子供たちに目を向けると、彼らはだいたい水筒やタンブラーを持っているんですね。
つまり反対する声は大人のものであり、子供たちにはあまり関係ない。この点はとても重要だと思っています。また反発という意味では、家庭ゴミの戸別収集と資源ステーションでの資源物収集についても外部の人からは反対の声がありますね。
——それはどういうものですか?

葉山では2014年から家庭ゴミの戸別収集と資源ステーションでの資源物収集を始めていて、町のなかにゴミ箱はありません。しかし街角や海岸にゴミ箱を勝手に置いたりする人がいます。
ポイ捨て対策であり、「ゴミ箱を置け。置けないなら町のほうで引き取れ」という反発ですね。町民は毎日の暮らしのなかで分別をしてくれています。頑張ってくれているのに、外から来られた人にだけ「ゴミ箱がありますからこちらに捨ててください」というわけにはいきません。
ゴミは町として受け取らない。全部持ち帰ってもらう。もしくは、ゴミになりそうなものは持ち込まないでくださいといったメッセージの発信を強めていかないとな、と思っています。
不法投棄は減っているんです。成果が出ているなら仕方ないという人も増えていると思われるので、ここが踏ん張りどころですね。
——環境を守るために敷居をあえて高くする?
葉山の自然を守ることにつながると思いますね。そのためにゴミを出さず、風紀も守る。結果として何が得られるかというと、町民の方々にとっての土地への誇りや自負心だと思います。
——誇りや自負心は土地の価値を高める?
そうですね。実際のところ町民の方々の意識は高いと思います。ゴミの戸別収集について5年ほど前に調べたところ、日本で無料の戸別収集を行なっている自治体は30くらいしかありませんでした。
もちろんそれぞれに事情はあるんですが、葉山のように町民任せで行っている自治体は、おそらく数えるほど。戸別に無料収集するとゴミの総量は増えると思われがちなものの、しっかり減量できていますし、資源化率も県内で1、2位を争うという、町民の高い意識があってこその状況にあるんです。


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