Day 31 SUN.
てっきり別れ話と思っていたのに……。まさかのうれし恥ずかし勘違い
昨晩、仕事で大阪に出張している妻から、LINEでメッセージが届いた。「明日のお昼、日本橋のマンダリン オリエンタル 東京に来てほしい。大切な話があります」。『ついにきたか』とユースケは覚悟を決めた。『よりによって男と会ってた場所で別れ話なんて、女は残酷だな』。
翌日、ホテルへと向かうユースケの装いは濃紺のダブルブレストジャケットと白のタートルネックカットソー。インナーの色みは、潔くあろうとする心の表れかもしれない。『こういう場では結婚指輪は外しておきべきか……』などと考えながら、待ち合わせの場所である37階のフレンチファインダイニング「シグネチャー」へ。妻は東京の景色が一望できる席に着き、ユースケに軽く手を振っている。しばらく見なかった満面の笑顔。
「話ってなんだよ?」。ユースケは着席なり、ぶっきらぼうに聞いた。「最近、仕事が忙しくってすれ違いが続いていたじゃない。昨日の出張でやっとプロジェクトが終わったの。このところ家を留守がちにしたりして、いろいろゴメンね。ちょうど結婚記念日だから、ふたりでとっておきのごちそうを食べようと思って」。
「へ? 結婚記念……」。ユースケの目が点になる。「あ、もしかしてまた忘れてたの? ホントひどい男ね」。「なんだと! じゃあ、言うぞ。この間、一緒に日本橋を歩いていたあの男は何なんだよ!?」。「へ!? ウケるんだけど〜。彼は仕事の仲間。イイ男だけど、彼には最愛のカレシがいるから、私なんて相手にされないし。この店も彼に教えてもらったの」。「……カレシ!!」。「また、変な想像膨らませて、暴走してたんでしょ」。すべてはユースケの勘違いだった。
「食事を楽しみましょ」。今年、就任した料理長が創作したフレンチは目玉が飛び出るほど旨かった。ウンウンとうなずきながらフォークとナイフを動かすが、うれしいやら恥ずかしいやらで、だんだんと料理の輪郭がかすんでいく。「まあ、そんなに感動してくれるなんて。私もうれしいわ」と妻は微笑んだ。
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「フレンチファインダイニング『シグネチャー』」『ミシュランガイド東京』で12年連続1つ星に輝くフレンチファインダイニングでは、新料理長のルーク・アームストロング氏によるコンテンポラリーフレンチが楽しめる。国内の旬の素材を使い、その味わいと美しさを活かしたクリエイティブな料理が世界の食通たちを唸らせる。
西崎博哉(MOUSTACHE)=写真(人物) 鈴木泰之=写真(静物) 武内雅英=スタイリング yoboon(coccina)=ヘアメイク 押条良太(押条事務所)=文 大関祐詞=編集 KDDIウェブコミュニケーションズ、モクシー東京錦糸町=撮影協力