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14試合ぶりの敗戦ストップ

2007年当時のラグビーW杯といえば、日本代表は1995年大会から敗戦を続けていた「負の時代」。だからこそ、自身の手で日本を勝利へ導きたいという想いは強かった。しかし、世界の壁は厚い。初戦はオーストラリアに大敗し、開幕から3戦連敗。
そんな状況で迎えたカナダ戦、試合終了間際に大西さんのコンバージョンゴールが決まり同点。W杯における日本の連敗記録を見事ストップさせた。当時の心境を大西さんはこう振り返る。
「僕がキックで14連敗を止めた感じになっているけど、そもそもあのキックをもらえるチャンスがなければ僕も決められなかった。ラグビーはトライやキックのチャンスが生まれるまでの過程が大事なんです」。
2007年のW杯、カナダ戦で同点となるコンバージョンゴールを決めた大西さん
ラグビー独自のルールであるキッカーは、会場中の視線を一身に集める存在。そのプレッシャーは計り知れない。
「そのときに思ったのは、今この瞬間どうやっても『結局自分がやってきたことしか出せない』ということ。外れればそれが自分の実力だし、入れば今までやってきたことが間違っていなかったと思えるだけ。ラグビーに『たられば』はない。そう覚悟を決めた瞬間に歓声も何も聞こえなくなって、ボールを蹴っていました」。
ボールをセットして蹴り上げるまでの、心を整える数秒間。大西さんの中には静かな覚悟があったのだ。


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