Watchの群像劇●ひと口に腕時計といっても十本十色の顔がある。それは歴史や外観、機構など多くの構成要素が複雑に絡み合うことで1本の腕時計が作られるからだ。本連載では腕時計が持っているさまざまな魅力を3つの視点からスポットライトを当てて紹介する。
今月の主役は「金の3針ドレスウォッチ」。時刻を伝える道具としての基本を遵守しつつ、不変の価値を持つ金に身を包む王道の時計だ。ここには登場する時計が繰り広げる群像劇がある。
大人の
ファッションとの相性の良さは明白となった「金の3針ドレスウォッチ」だが、ケースや文字盤のデザイン、素材使い、ディテールワーク……。一見同じようでいて、それぞれがまったく異なる。素晴らしい腕時計には、唯一無二の存在感が宿っている。強い意志を持つかのように語りかけてくる、6本を厳選した。
A.LANGE & SÖHNE
A.ランゲ&ゾーネ/サクソニア
ブランドの理念と美学を凝縮させたアイコンモデル
ドイツの東西統一から、新たなスタートを切ったA.ランゲ&ゾーネ。1994年に発表された復興第1弾コレクションのひとつに、「サクソニア」を連ねたのは当然の帰結だったのだろう。その名は1845年、創業者F.A.ランゲが理想の時計作りを目指し、設立した工房の地ザクセンに由来するからだ。
2015年発表の本作は、前作よりも小ぶりな35mmケースを採用し、これに合わせてインデックスの長さなども微妙に調整。美しきデザインを凝縮させた。
VACHERON CONSTANTIN
ヴァシュロン・コンスタンタン/パトリモニー・オートマティック
1950年代のミニマリズムを継承するオーセンティックなスタイル260年以上にわたって一度も絶やすことのない時計作りの伝統から、ジュネーブ最古のマニュファクチュールと称えられる。金の3針ドレスウォッチこそ、その象徴といえるだろう。
完璧なラウンドシェイプと無駄のない美しさは1950年代に誕生。ベゼル幅を薄く抑え、文字盤の4カ所に設置された楔形インデックスや適切な長さに整えられた針が高い視認性を誇る。当時のミニマリズムと機能美が融合したブランドの美意識を堪能したい。
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