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2019.11.21

ファッション

藤原ヒロシさんがブルガリと考えた、キャッシュレス時代の財布のミライ

「僕はもう20年くらい財布を使っていないんです」。そんな藤原ヒロシさんの言葉を聞いて、何か扉が開いたような、すっきりとした気持ちになった。
ブルガリ×フラグメントのカプセルコレクション第2弾。その中に、今の時代の財布として使うに相応しいカードケースがあった。そこで直接話を聞きたいと思ったのである。確かに、キャッシュレス化が進んだ今の時代はこれで十分。
ブルガリ×フラグメントのカプセルコレクション第2弾。その中に、今の時代の財布として使うに相応しいカードケースがあった。
[左]スマートフォンとカード類が収納できればいい。そんなリクエストに完璧な形で応えてくれるのがこのケース。メタルリングをボトムスのベルトループに固定してもいいし、レザーストラップに手首を通して手持ちするのもスタイリッシュだと思う。H10×W19cm 10万7000円、[右]こちらは12枚のカードが収納できる2つ折りのホルダー。万一のときのためのキャッシュを内側に挟んでおくというのもアリ。H9×W10×D2cm 4万4000円/ともにブルガリ ジャパン 03-6362-0100
「メンズは特にそうですね。先日ふとキャッシュレス時代のことを考えていて、結局財布は不要になるだろう、と思いました。日本でも海外でもキャッシュしか使えない場所は結構ありますが、そこまで大金を持ち歩くケースはありませんからね」。
そうか、いずれ財布らしい財布はなくなるのだ。“サイフのミライ”は限りなくミニマルな方向へ向かうのだ──と納得しかけたところで藤原さんはこう続けた。
「それでも財布というものは確かに残っているし、実際に使う人がいます。腕時計もそう。スマートフォンで正確な時間がわかるのに、なぜか存在し続けているんですよ」。
“サイフのミライ”に手が届いたかと思ったが、再び現在に引き戻される。う〜ん、それもそのとおり。では財布にしても腕時計にしても、なぜ残っているのでしょうか。
「たぶん人はモノに対して、何らかのファンタジーを持っているんでしょうね」。

今回、藤原さんはイタリアの工場を訪れ、レザーバッグの製作過程を目の当たりにした。伝統的なクラフツマンシップに触れ、大いに感銘を受けたそうだ。その一方で、このコレクションにおけるブルガリ側の製作チームには若い人も多く、闊達なコミュニケーションをとりながらプロジェクトを進めることができたという。デザイナーも自由な雰囲気のなかでクリエイションできたのではないか、と回想する。
「ブルガリの通常ラインではできないことも、フラグメントという(ストリートの)免罪符があれば新しいことができるかもしれない。つまり、製作チームにも僕にも刺激がある。これがコラボレーションの意義なのかな、と思うんです」。
そんなふうにして出来上がったものにこそ、僕らはより強いファンタジーを感じるのではないか。“サイフのミライ”がどうなるかはわからない。だがそこに必要性や機能性以外のファンタジーが求められる限り、まだ見ぬクリエイションが生まれる余地はあるのだ。
 
清水健吾=写真 来田拓也=スタイリング 加瀬友重=文


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