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だが、彼の理想と夢を注ぎ込んだDMC-12が生産されたのはわずか3年半。自ら立ち上げた自動車メーカーもあえなく倒産してしまう。会社の凋落を決定づけたのは、なんと社長のジョン・デロリアン自身がコカインの取り引きで逮捕されるという一大スキャンダルだった。いったい彼に何が起こったのか――。
ジョン・デロリアンは、自ら会社を立ち上げ、画期的な車DMC-12を生産したが…… ©Driven Film Productions 2018
この映画では、1970年代の終わりから1980年代にかけて、ジョン・デロリアン邸の隣人だったジム・ホフマンという人物と、ジョン・デロリアンとの関係性を中心に描き出す。このホフマンという人物こそ、デロリアンがコカイン取り引きで逮捕されるきっかけを作った男だった。脚本は、公的に記録されている事実をもとに執筆されたというが、ホフマンについての情報は少なかったため、ここに関しては、ある程度自由な解釈でキャラクターをつくり出すことができた。
ニック・ハム監督も「脚本のコリン・ベイトマンは、この映画にバカバカしくておかしな雰囲気をもたらしてくれた。コリンも僕も、ホフマンのコミカルな人間性に興味を持っていたんだ。彼は嘘つきでずるいカメレオンのような人間だけど、彼が内に秘めていた面白さを表現したかった」と明かす。
ホフマンの妻のエレン(ジュディ・グリア)が言う「あなたは悪党じゃないわ。ただのバカなのよ」というセリフにも、彼の性質がよく表れている。

栄光と挫折の人生

ホフマンを演じるのは、ジェイソン・サダイキス。アメリカの人気コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」で注目を集め、『モンスター上司』『なんちゃって家族』といった作品に出演してきた才人である。
「この映画はラブストーリーに似たところがある」と語るサダイキスは、「デロリアンとホフマンとの間にあるのは友情なんだけど、素敵な出会いから始まって、つまらないケンカもする。二人の関係性を表すシーンがいくつもある」と指摘する。
そしてサダイキスが「素敵な出会い」と語る前半のシーンこそ、二人の関係性の肝となる。
ガレージで「ポンティアックGTO」の修理に苦心していたホフマンのもとにデロリアンがやってくる。いともたやすくエンジンを修理してみせたデロリアンは「これは僕が設計したんだ」と明かす。そして「次は何をするんだい?」と尋ねられたデロリアンは、自身が立ち上げた会社でまさにこれから作ろうとしている新しい車(DMC-12)について、デザイン画を描きながら話してみせる。
あの特徴的なガルウィングドアをスケッチしながら、「未来の車だ。真上に飛ぶ。どこでも駐車可能だ。重力に逆らうんだ。高いが価値がある」。情熱的に語るデロリアンの言葉に「まるでSFみたいだな」と、ホフマンは夢見心地の表情を見せる。


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