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将来のために今を犠牲にすべきなのか?

もっと法律の勉強をしたい。そんな気持ちから、ロースクールへの入学を決意。あえて慣れ親しんだ名古屋を離れ、友人も草野球も何もない大阪で法科大学院生としての生活をスタートさせた。
「人生でいちばん楽しかったのはいつ?と聞かれたら、迷わずロースクールでの3年間と答えます。司法試験の受験が苦しいと言う人は多いけど、それは勉強が試験合格のための手段でしかないから。弁護士になる目的のためだけに3年間勉強をしていたら、そりゃしんどいですよ。僕は目的として、ただただ法律の勉強がしたかったので、まったく辛くなかったんです」。

一方で、多くの学生が将来のために“今”という時間を犠牲にし続ける空気には、強い違和感があったという。
「廃人のようになって勉強する友人を見ていたら、そんなイヤな思いをしてまで今を犠牲にする必要はあるのかなと不思議でした。弁護士になることが満足いく人生のためだとしたら、今の3年間も人生の一部をつくる大事な一期間だし、楽しくなければおかしい。将来のために今をないがしろにしていい、という理屈は僕のなかでは通らないんですよ」。
勉強も職業選択も人生を楽しむツールに過ぎない。今を楽しまないロースクールの生徒たちの姿勢は、大きな疑問として残った。
「良い大学に入るために高校は受験に専念しよう、大学に入ったら就職のため、就職したら5年後10年後のポジションのため、いまを捨ててがんばりましょうっていうのがずっと続く人生っておかしくないですか? 楽しみを延々と先延ばしにしているうちに、どんどん人生を楽しむ習慣や人柄がなくなって、何も楽しくなくなってしまうと思うんです」。
今を楽しめなければ、たとえ目指しているものが手に入ったとしても楽しめない。それはお金においても同じ。福永さんは、そう考えていた。
3年後、見事に福永さんは司法試験に一発合格する。晴れて弁護士となってからの活躍は後編で。
 
藤野ゆり=取材・文 小島マサヒロ=写真


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