「秘密厳守」の上司に情報が集まる
そうして部下が自分から身の上話をしてくれるようになればしめたものです。マネジメント上で考慮すべきプライベート情報を知ることができ、適切なメンバーマネジメントが可能となります。
しかし、落とし穴があります。人はなかなか秘密を守れません。
「あいつ実はプライベートでこういう大変なことがあるんだよな」と、ほかの部下や上司や人事、経営者などに言ってしまってはせっかく得た信頼も丸つぶれです。
たとえ「これは共有しておいてあげたほうがいいと思って」と動機が善だとしてもNGです。人に口に戸は立てられず、秘密だったはずのプライベートが同僚から本人の耳に届いてしまえば最悪です。
「理由」がなくても動いてもらえる信頼を得よ
部下の私的な事情を考慮してマネジメントを行うのに、そのプライベート情報自体を共有することは必要ありません。単に、部下がしてもらえるとうれしいサポートをただ行えば良いのです。
子供の病気の介護で残業ができない部下がいたら、「すまんが、いろいろあって直近あいつにはこれ以上仕事を振らないでやってくれ」と周囲に配慮してもらえばいい。
ただ、そこで必要なのが上司自身の周囲からの信頼です。その上司の指示なら、理由も聞かずに粛々とやってくれる人がどれだけいるかということです。
信頼があればこそ、部下の秘密を明かすことなく部下をサポートできる。そんな上司を目指したいものです。
曽和利光=文 株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長 1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。 |
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