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LEDライトで得た、ユーザー心理を突く核心

手応えを感じたのは2014年ごろ、LEDライトを担当していたときだ。時代は蛍光灯からLEDに移り変わる最中。当時まだLEDライトには今ほどの明るさは備わっていなかった。
そんな中、主流が200ルーメンだったのに対し、1000ルーメンのLED製品が登場。当時のスペックとしては革新的だった。
本田さん
「でも、これと同じものを『コールマン史上もっとも明るい1000ルーメンです!』という打ち出し方をしても、おそらく売れないだろうと思いました」。
事実、スペックで売り込んでいた他社の売れ行きはそれほどでもない。そこで本田さんは“1000ルーメン”がユーザーにどんな価値を提供できるのか考えることにしたという。
「ちょっと調べたら1000ルーメンってワンマントルランタン(コールマンの人気ガソリンランタン)と同じ明るさなんですよ。じゃあそれでいいじゃんって話だけど、ワンマントルランタンは火を使用するし、熱くて火傷のリスクがある。それに専用のガソリンも準備する必要がある。LEDならすぐに用意できる乾電池で明るいキャンプサイトが叶う。そこでお子さんがいる方やキャンプ慣れしていないユーザーに『ワンマントルランタンと同じ明るさで、安全です』という伝え方をするようにしました」。
ミレニアLEDキャンプサイトランタン
2015年2月に発売された「ミレニアLEDキャンプサイトランタン」。プレスリリースには、「火気燃料を使用しないためどこでも手軽に利用でき、(中略)小さなお子様を持つファミリーキャンプにオススメしたい製品です」との表現がある。
ただスペックを謳うのではなく、その先の使い方やメリットを明確にする。使用イメージが浮かぶだけでユーザーは自然と製品を手に取ってくれた。このことをきっかけに本田さんは商品を売るためには、コミュニケーションが重要なことに気づいたという。
「スペックで推すのではなく、この商品によってユーザーにどんな魅力的な価値を提供できるかというところまで、きちんと伝えることの大切さを感じました。営業だけでなく、僕たち企画者もコミュニケーションを大事にする。それからは製品を使用するとユーザーにどんなうれしいことがあるか、という点を企画開発の段階でまず大事にするようになりましたね」。
30代半ばで気づいたユーザーファーストの重要性。これがひとつのターニングポイントとなり、本田さんは遮光性に優れた「ダークルーム」シリーズや、“1人で立てられる”をコンセプトとするテントなど、ヒット商品を次々と生み出した。
タフスクリーン2ルームハウス
2020年の新商品展示会でお目見えした「タフスクリーン2ルームハウス」。展示会の商品板には「簡単に立てやすくなった。」「天井が高く、テント内が広くなった。」など、ユーザー目線のメリットが書かれていた。
製品の価値が伝わるかどうかはコミュニケーション次第だ、と本田さんは言う。
「伝え方については経験だけじゃなく常にアンテナを張るようにしています。アウトドア用品だけじゃなくクルマや家電、そのほか一般消費財など……いろいろな方面から情報を集めないと。結局、すべての製品に言えるのは伝えるための努力を惜しんではいけないということだと思う」。


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