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ナチュラルでサステイナブルな製法とアート性の高いボトルデザイン

日本酒ができる工程が壁一面にデザインされたWAKAZEの店内。
──自然製法にこだわっているんですね。
今井 日本酒には表示義務のない添加物があります。例えば酸類とかミネラル、酵素剤などですね。特に現代では、安定生産のために人工乳酸を入れる製法が主流です。でもそれは、料理で例えると化学調味料に頼っているという見方もあるのです。
──表示されない添加物ですか……。
今井 一流の料理人が素材から丁寧に出汁をとるように、WAKAZEのお酒も余計なものは入っていません。三軒茶屋で造っているWAKAZEのお酒は、すべて地域の湧き水を使って仕込んでいます。特に、水のなかにいる微生物の力を借りて造る「生酛」や「水酛」と呼ばれる製法では、水が変わればそこにいる生き物も変わるし、そうすると同じお酒を造ろうとしても、全然違うお酒ができて面白いんですよね。
──水でそんなに変わるんですね。
今井 誰でも造れる酒やどこでも造れる酒では、僕たちが造る意味はない。お酒造りも工業化が進んで、添加物を使って安定して造れるようになりました。一概に悪いこととは思いませんが、そこに甘んじていると、日本酒はただ酔っ払うためだけの飲み物になってしまう。今はもう、次の日本酒の時代を作る流れがきていると思っています。
──原料のお米にもこだわりがあるのでしょうか?
今井 三軒茶屋ではどぶろくを造っているのですが、酒米でどぶろくを造ると、あっさりしすぎて美味しくないんですね。食べても美味しい米のほうが酒も美味しくなるので、「つや姫」という食用の米を積極的に使っています。米の力を引き出して、ボタニカルみたいな副原料を高いバランスで調和させることで新しいお酒ができると思っています。
──米らしさを大事にされている、と。
今井 米を磨いて磨いて、個性をなくして「きれい」なお酒を造るのが、ここ100年くらいの日本酒造りでした。「精米歩合」と言って、米を削いで磨くのですが、磨くほどに雑味のない上品な日本酒ができるんです。ある意味で贅沢だからこそ値段も張るのですが、ここ最近は逆方向に進んできています。
米を磨くことは、農家さんが一生懸命作った米を削って捨てるということだし、逆に言えば、磨いた米なら誰だって美味しいお酒は造れるんですよ。なので、「磨かずに美味しいお酒が造れる」というのがこれからは問われてくるはずです。
WAKAZEのボトルデザインは、どれも従来の日本酒のデザインとは一線を画したものばかり。
──ところでWAKAZEは、今までの日本酒にはなかったボトルデザインも特徴的ですが。
今井 お客さんが手に取りやすく、テーブルの上を華やかに盛り上げてくれるようなデザインを心がけています。「オリエンタル」は原料のボタニカル素材をモチーフとして取り入れています。それが輪になって「調和」を表しているのがポイントですね。「チャイ」は、インドのイメージなのでタージ・マハルやゾウを描いていて、お酒の席でちょっとした話題にもなるはずです。


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