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日本酒を「世界酒」へ。酒蔵の末っ子が抱く使命感

──新しい酒造りのモチベーションはどこからくるんですか?
今井 もともと実家が、群馬にある「聖酒造」という酒蔵なんです。酒蔵の家に生まれた身として、いま日本酒が飲まれなくなっている状況は歯がゆい。日本酒業界全体に、何か僕ができることはないかと学生時代から考えてきてました。でも、残念ながら日本酒業界はまだまだ国内で小さくまとまっている状況なので、それを打破するためにも、僕はWAKAZEで日本酒を「世界酒」にすることを目指そうと考えました。
──今は海外でも日本酒は人気が出てきていますしね。
今井 日本酒が「世界酒」になるには、日本から世界に輸出するだけではなく、世界各地で日本酒が作られて、“地酒”になっていくことが大切。現地の人のアイデンティティがこもった日本酒が世界各地で造られてほしいと思っています。
──世界各地でワインが作られているように?
今井 そうですね。ブルゴーニュワイン、カリフォルニアワイン、グルジアワインのように、日本酒も世界中で、その土地ごとのお酒として広がってほしい。ただ、海外で造られたお酒は厳密には「日本酒」とは呼べないので、私たちは「SAKE」と呼んでいます。
海外でSAKEが広まるには、SAKEの造り手の数が増えないといけない。だから僕たちはフランスでSAKE造りに挑むことにしました。自分たちがロールモデルとなって、世界中の人に「もしかしたら自分たちもSAKEが造れるかもしれない」と思ってほしいんです。
 

酒造りの舞台はフランスへ! 硬水で醸すフランスの「SAKE」とは

今井さんはフランスでの挑戦が実るまで、帰国は考えていないという。
──それは壮大な計画ですね。
今井 すでにパリに自社の酒蔵をつくって、SAKE造りに挑戦しています。パリは食の都だし、フランスはワイン大国でもある。きっと評価も厳しいでしょう。でも、あえてこの場所を選びました。
日本と同じものを造るんだったら輸出と変わらないので、パリでしか造れないものにトライしたい。素材はフランス産の米を使用して、水は現地の硬水で仕込み、酵母は地元のワイン酵母を使う。そのあたりも徹底してチャレンジしたいですね。
軟水と硬水ではモノがまったく違いますし、難易度はかなり高いと思いますが、完成したあかつきには、ぜひパリにSAKEを飲みにきてくださいね!
 
株式会社WAKAZE●2016年設立、「日本酒を世界酒に」をビジョンに活動するスタートアップ企業。「委託醸造」という形で自社の商品を開発・販売し、「ワイン樽を活用して熟成させた日本酒《オルビア》」や植物やスパイスを入れて風味づけをした新感覚の酒「ボタニカルSAKE《フォニア》」など革新的な酒を世に送り出してきた。2018年7月には「その他醸造酒」の製造免許を取得し、東京・三軒茶屋にて自社どぶろく醸造所と併設飲食店をオープン、新時代の「SAKE」の開発と発信を行なっている。
​​www.wakaze.jp
 
横尾有紀=取材・文


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