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2019.10.21

ファッション

10年後、“ジュンヤマン モデル”のようなデニムなオジサマになっていたい!

ずばりデニムに戻りたい。そんな想いを抱く僕ら大人の背中を力強く押してくれるのが、今シーズンのコム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マンのコレクションだ。ここでは、そんなオーシャンズ編集部の記憶に強く残ったコレクションを、我らと同じオーシャンズ世代のジャーナリスト・後藤洋平さんに分析してもらった。
自由に、楽しく。ランウェイを闊歩した“ジュンヤ モデル”たちが改めて教えてくれるデニムの魅力。10年後、僕らもデニムが似合うこんなオジサマになっていたい。
 

2019AWのコム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン
のランウェイを飾ったデニムなオジサマ

ゴールドラッシュに沸いた19世紀半ばの米カリフォルニアで、採掘にあたった人々が「頑丈で汚れが目立たない」とはいたパンツ。デニムの歴史は、あの夢物語のサイドストーリーだ。彼らの多くは夢破れたけれど、デニムは世界中の人に愛されるようになり、一部のヴィンテージは「お宝」として取引されている。
そして物語は、今も続いている。ファッションの最前線でも。私が継続的に取材している欧州メンズコレクションで、デニムが登場しなかったシーズンはない。「きっと10年後も20年後も続くんだろうな」と確信したのは今年1月、パリでコム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マンの2019年秋冬コレクションを見たときだった。
あのショーではモデルたちが、他とは全く違った。キャスティングされたのは全員が年配の男性。いわゆる職業モデルではなく俳優やテニスコーチもいて体形もさまざまだった。
すべてのルックに共通していたのは、大人の魅力と、少年のような遊び心が共存していたことだ。
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いろんなタイプのデニムをはいた個性的な「オヤジ」たちが明るい表情で闊歩したランウェーショー。上半身をジャケットでカッチリとキメた大人のスタイルながら、ボトムスやシャツの裾からはチャーミングな要素が溢れていた。こんなスタイルなら足元は、レザーシューズでもブーツでも、スニーカーだって、こんなにしっくりくる。楽しそうに歩くモデルたちの姿に、見ている私たちも幸せな気分になれるショーだった。
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上半身は質感がある素材を使ったジャケット。一見シンプルだが、腕の部分で素材の切り替えがあったり、背面をニット素材の柄にしたり。個性的なモデルを起用しつつフォーマルを突き詰めた2015年秋冬シーズンのショーを思い出した。
けれども、今シーズンのポイントはジャケットを着用しながらも、リラックステイストを加えたこと。おじさんなのに、インナーの裾はアウト。おじさんなのに、デニムのボトムスはロールアップ。シックなジャケットと対照的で、腰のあたりから下はチャーミングさが全開なのだ。
言うまでもなく、一番のパワーアイテムはデニムだった。ジュンヤが長年仕事をともにする、リーバイスの「501」と「503」を中心にさまざまなデニムが投入されていた。シルエットにも多様性があって、ワイドなものもタイトなものも。ダメージ加工、ノンウォッシュと生地にもいろんな顔が。幅広いバリエーションと、そのどれもが合わせやすいというデニムの底力を、今回のコレクションであらためて痛感した。
そして、そんなスタイルとモデルたちの姿や立ち振る舞いが絶妙にマッチしていた。あるモデルはランウェーで立ち止まって客に話しかけ、おどけて後ろ向きに歩いた。フィナーレでは彼らが肩を組み合い、体を揺らして登場した。整列なんてしない。笑顔とピースフルな雰囲気が会場にあふれた。
当時の取材ノートには「誰だってきっと、こんなに明るくてカッコいいオヤジになりたい」という走り書きのメモがある。ちょうど170年前にカリフォルニアに向かった金探求者たちも、こんな表情をしていたのかもしれない。

朝日新聞ファッション・映画担当デスク兼記者
後藤洋平さん(43歳)
1976年生まれ、大阪府出身。学生時代はアルバイト収入の全てを服とレコード、本に費やす。’99年に報知新聞社へ入社し、吉本興業や宝塚歌劇など主に芸能を担当。’06年に朝日新聞に移り、大阪社会部で府警捜査1課などを担当。2014年に東京・文化くらし報道部に。ファッションページの責任者を務めながら欧州コレクションやバーゼルワールドを取材している。


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