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2人の娘を幸せにすることと、走るモチベーション

競技人生のなかで学んできたさまざまな経験は、今、自身の子育てにも反映されている。現在長女は小学1年生。「下の子はまだ小さいのでなんとも言えませんが、上の子は僕に性格が似てますね」という長女には体操、水泳、ピアノなど、やりたいと言ったことは基本的にはすべてやらせているという。

「別に何を選んでもいいんですが、親としては子供の選択肢をなるべく広げてあげることは大事だと思っています」。
走るということを突き詰めてきた大迫選手。だからこそ選択肢は広げつつも、それぞれに向き合う子供の姿勢は大事にしている。
「一度ピアノが難しいからやめたい、つまらないと言い出したことがあったんです。だけど、今頑張って、それを乗り越えたら、もっと楽しくなるかもしれないじゃないですか。
だから娘には、もしここを乗り越えて、それでもつまらなかったら辞めたらいいじゃんって話しました。きついところで辞めるのではなく、きついところが終わってから、もう1度判断しなさいということは多いですね。
娘は『パパは楽しく走ってるんでしょ?』って言うんですよ。それで、『本当にいつも楽しいと思っていると思う?』って聞いたら、『違うの?』って言うから、『違うよ』って言いました(笑)」。

子供はときに気まぐれであったり、感情で動いたりするもの。そんなときでも大迫選手は、大人と話すように常にフラットに説明をする。
「でも『理解できた?』って聞くと『わかんない!』って言ってますよ(笑)。だけど、それでいいと思うんですよ、実際。今はわからなくても、親として伝えることが大切。もしかしたら精神年齢が似ているのかもしれないけど(笑)、あえて子供の目線に落として話す必要もないかなって」。
試合が決まり、合宿などに入れば、家族と離れる時間は長くなる。だからこそ家族と一緒の時間はしっかりと子供と向き合っているのだろう、と思いきや、「いや……僕が自由だからな……」と苦笑いをした。
「もちろん、ある程度のことはやったほうがいいかもしれないですけど、僕は中途半端に何かをするというのが苦手で……。だから子育てに意識がいかないほど、競技に集中していることも多いんですね。
例えば子供を抱っこするときでも、もしこれで筋を痛めたらどうしようと考えてしまったり(笑)。僕は強くなるためには余計なものをそぎ落としていくことが重要だと思っているんです。家族との時間、友達と遊びに行くこと……そういった競技に必要ないものは我慢して削って、競技に向き合う。
それを積み重ねたからこそ、スタートラインに立ったときに、自分自身に対して自信が持てるし、達成感がある。本にも書きましたが、妥協なくスタートラインに立てたことは、僕にとってはひとつの勝利なんです。そうやって普段一緒にいられないからこそ、競技を頑張って、子供たちにいい姿を見せることが、僕が娘たちに返せることだと思っているし、走るモチベーションのひとつにもなっています」。


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