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爆発的にヒットした『ホームレス中学生』

そして田村さんの人気を決定づけたのが、前述の『ホームレス中学生』である。バラエティで自身の幼少期の貧乏ネタを話していたのが、出版社の目にとまり書籍化に至った。『ホームレス中学生』の爆発的ヒットは、本業であるお笑いにも少なからず変化をもたらした。
「僕自身は変わっているつもりはない。でも何を言っても『金持ってるやん。2億稼いでるやん』という空気になってしまうんです。典型的だったのは僕らが大阪の劇場に出たとき。客席からヤジが飛んだんですよ。おばちゃんが『この税金泥棒!』って。まあぼく印税もらっただけで、税金泥棒は一切してないんですけど(笑)」。
これまでウケていたものが、ウケない。それが単なる観客の嫉妬ややっかみからくるものなのか、それとも自分がどこか天狗になっているせいなのか、原因がわからず焦燥感だけが募る日々だった。
「それについて改めて話し合うことはなかったけど、川島くんにとっても、辛い時期だったと思います」。
今、当時の状況を冷静に邂逅する田村さんは自分の実力不足だったと静かにこぼす。
「そこから仕事が一気に減ったのは、単純に世間が僕に飽きた、というのもあるだろうし。僕は才能がポンと開花するのではなく、何回も経験して場の空気を掴んでいくタイプなので、『ホームレス』で一気にトップクラスの人と絡まなあかんところまで押しあげられて、ただただテンパってしまったんです」。
その後、芸人としての仕事が減少するなかで田村さんを救ったのは、学生時代に夢中になった「バスケ」だった。【後編】へ続く。
 
藤野ゆり(清談社)=取材・文 澤田聖司=写真
 
【関連リンク】
YouTubeチャンネル「麒麟・田村のバスケでバババーン!」

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