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もうひとつの進化のポイントとして、海外での緊急通報への対応がある。
これまでのApple Watchには、「緊急SOS」機能が備わっており、日本で救急への連絡にメディカルIDやGPS情報を加えて通知できた。同時に緊急連絡先の家族に自分の場所を通知する仕組みも用意されてきた。
ちなみにメディカルIDには、あらかじめ設定した自分の名前・生年月日、身長・体重、血液型、臓器ドナーの可否、緊急連絡先が含まれる。
これに加えて、新たに国際緊急通報機能が用意された。これは、自分が居住していない国でApple Watchのみを装着している際に事故やケガをしたとき、ローミングができないセルラーモデルのApple Watchから、その国の警察や消防などに電話することができる機能だ。
日本で購入したApple Watch Series 5 セルラー+GPSモデルは、海外に出かけた際、時計単体での緊急連絡の通話を行うことができる。ただし前述のように、メディカルIDやGPS位置情報など、付加的な情報の通知はできない。
さらに、日本を訪れる外国人は、Apple Watch単体での日本での緊急通報には対応できない制限がつく。ペアリングしているiPhoneを持っていれば、日本での緊急通報をApple Watchから行うことは可能だ。
海外に出かけた際、あるいは海外から日本にやってきた旅行者にとっても、この機能を使う機会はないほうがいい。ただし、もしもの備えとして、日本でも旅行者がこの機能を利用できるようにルールを調整すべきだと感じた。

容量増とwatchOS 6で活用範囲が広がる

もう1点、Apple Watch Series 5では、メモリーが倍の32GBに増加した。これによって、よりたくさんのアプリや音楽、Podcastなどを保存し、Apple Watch単体でワークアウト中などに楽しむことができるようになった。
Apple Watchと同じくAppleのウェアラブル製品の基軸となっているワイヤレスヘッドフォン、AirPods。実はこの製品の最初のきっかけは、Apple Watchで音楽を聴くためにどんなデバイスが必要か? というテーマが与えられて生まれた製品だったそうだ。
時計に直接ケーブルを差し込むことほど滑稽な姿はありえないし、これほど小さなデバイスにケーブルを差し込む穴を開けるのも現実的ではない。ワイヤレスで接続してお互いを補い合う存在として活用することを前提に、AirPodsが誕生した。
もともとイヤホンジャックがない製品のためのヘッドフォンであったことから、イヤホンジャックがなくなったiPhone 7以降のスマートフォンにも最適な組み合わせとなったのだ。Apple Watchの容量増加によって、より多くの音楽をApple Musicなどからダウンロードして保存し、セルラー通信に頼らず音楽を楽しむことができる。
watchOS 6へのアップグレードで、オーディオブックの再生に対応したり、ボイスメモアプリが追加されることから、歩きながら何かアイデアをまとめる、といった用途にも大容量化したApple WatchとAirPodsの組み合わせが生かせる。
加えて、watchOS 6では、新たに周囲の音量を検出して大きすぎる騒音を知らせる聴覚機能や女性のサイクルの記録、そしてApple Watch単体でアプリがダウンロードできるApp Storeが新設される。
これまで、どちらかと言うとiPhoneのディスプレーやセンサーの拡張を手首に装着する、という印象だったApple Watchは、より独立した存在として、生活を支えてくれるようになるだろう。
 
松村 太郎:ジャーナリスト
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記事提供:東洋経済ONLINE


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