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選手の“個性”から生まれた卓球台

このパラ卓球台とは、選手たちの障がいとプレーを本質的に、そしてポジティブに感じてもらうために考えられたものだ。
「パラスポーツのいろいろなイベントに足を運びましたが、例えば車椅子に座って競技を体験しましょうというイベントがあっても、5分後の自分には関係がなくなる非現実的な体験で、動けないのは大変だな、車椅子って不便だなという感想しか残らない。どうしてもネガティブインプットで終わってしまうと感じていました。そうではなくて、障がいは個性であって、選手はすごいんだって感じてほしかった」。
そこで考えついたのが、各選手が感じる卓球台のイメージを可視化するということだった。
そこで考えついたのが、各選手が感じる卓球台のイメージを可視化するということだった。 例えば、岩渕幸洋選手は、左足首を曲げることができない。
例えば、岩渕幸洋選手は、左足首を曲げることができない。そのため、一度左に踏み込むと、元のポジションに戻りにくくなる。だから、彼から見ると卓球台の左サイドが長くなるのだ。
左足首に障がいを持つ岩渕選手は、卓球台がこんな形に感じられる。左側が極端に伸びている。
「弱点を教えていいのか、と聞かれることもあるのですが、パラ卓球は相手の障がいをめちゃくちゃ研究して、弱点を突き合うスポーツなんです。それを相手が返したときに“お前やるじゃん”ってなるんです。障がいを突くことが、相手へのリスペクトになるんです」。
ホームページでは、ナショナルチームとして所属している選手のポートレイトが、それぞれが感じる卓球台のフォルムから覗くようデザインされている。
ホームページでは、選手のポートレイトが、それぞれが感じる卓球台のフォルム型から覗く形でデザインされている。
そして、立石はこの卓球台を本当に作ってしまった。制作を担当したのはリオ五輪に続き、2020年の東京オリンピックの卓球台も制作する三英だ。
「このアイデアが出たとき、絶対に本物を作りたいと思いました。三英の三浦社長に相談したところ、こんなに意義のあることを発信できるのであれば、卓球に携わる企業としてやるべきだとご協力いただけたんです」。
この卓球台の天板の構造や色は、オリパラの競技用と変わらない仕様で作られている。そして土台はデザインにもこだわりつつも、競技用として使えるようになっている。

「人間のすごさは創造力だと思うんです。それぞれの選手が自分の障がいを克服するにはどうしたらいいかを考え、たどり着いたのが今のプレースタイル。従来の形から、少しずつ自分の形に変わっていく。そのストーリーを、この卓球台は表現しているんです」。


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