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静かに「ツーーーッ」と涙が流れた作品は……

『悪人』について熱弁する平山祐介
──邦画で泣いた作品を挙げるとしたら何ですか?
平山 李相日(リ・サンイル)監督の『悪人』かな。この物語も切ないですよね。出演者たちの芝居はもちろん素晴らしいんだけど、妻夫木聡さんと深津絵里さんが演じる主人公たちが、逃げて、逃げて、逃げた果てに、綺麗な夕陽を見たんですよ。
その夕陽を眺めながら、ふたりはどういう気持ちでこれを見てるんだろうって。お互いのことをどう思っていたのか、どう依存し合っていたのか、そのシーンにすべて凝縮されている感じがして、すごく感情移入しました。泣くというより、『ツーーーッ』って涙が流れてきましたね。
──『悪人』は吉田修一さんの小説が原作ですよね。
平山 そうです。吉田修一さんの原作がもう本当に素晴らしい。でも、原作が面白いからって必ずしも映画も面白いとは限らないじゃないですか。でも『悪人』は映画でも期待を裏切らなかったですね。切ないところもしっかり描かれている。
──どういう作品に泣かされることが多いんですか?
平山 泣かしてやろう!みたいな作品はそもそも観にいかない。『悪人』の夕陽のシーンみたいに、ロケーションや風景、ストーリーや俳優の表情に自分の気持ちが自然と乗っかったときに、心を打たれる気がしますね。
悪人(2010)
監督|李相日 原作|吉田修一 出演|妻夫木聡、深津絵里。芥川賞作家・吉田修一「悪人」の映画化には10人の映画監督が名乗りをあげ、20社以上の映画化件争奪戦に。殺人を犯した男と男を愛した女。「いったい誰が本当の“悪人”なのか」を観る者に問う重厚感ある作品。樹木希林や柄本明などベテラン勢から満島ひかり、岡田将生などの若手が集結し、豪華キャストでも話題となった。


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