職業「アイドル」としての居場所
親孝行を主題に戦隊ヒーロー出身の俳優たちで構成された『純烈』。とはいえ、結成当時の足並みが揃っていたとは言い難い。即メジャーデビューと言われて結んだ契約だったが、実際は下積み期間に3年を要した。
「メジャーデビューの約束の日が近づいても何も動きがないから、あれ、おかしいな?って。実際、『純烈』は何も決まっていなかったんです。騙された!って最初はめちゃくちゃムカついてましたよ(笑)」。
それでも白川さんが諦めなかったのは、紅白出場という途方も無い夢を叶えるまでついてきてくれたファンの存在が大きかったと話す。
「スーパー銭湯アイドルって言われることもあるけど、アイドルなんて、そんなふうに思ったことはないんです。ファンにも目を覚ましてくれって言いたい(笑)。でもうだつのあがらない僕を、夢みたいなステージに上げてくれたのは間違いなくファンのおかげ。だから僕も、彼女たちに夢を見させられるような存在でいたいんです」。
そう話す白川さんの姿は、その言葉にひとつもウソがないのも含めて、アイドルそのものだ。
「生き抜ける場所を探すって、大事なことだと思うんですよ。それが輝ける居場所であれば、なおさらいいけど、まずは呼吸がラクにできるような居場所を。もし今、息苦しさを感じているなら、別に何歳からだって別の山に登っていいと思うんですよね」。
力士、俳優、そしてムード歌謡アイドルと、居場所を転々とした白川さん。自分がラクに呼吸できる場所を見つけるまでには、もしかしたら人より少し時間がかかったのかもしれない。
だからこそ『純烈』という居場所は、ファンと共に歩んだ歳月のぶんだけ、かけがえのないものとなった。「夢は紅白出場、親孝行」を果たした今、目下の目標はやはり2度目の紅白出場だ。
「あとは『純烈』をどれだけ長く続けていけるか、ですね。人生のヒントをくれたり、支えてくれたり、弱っているときに夢を見させてくれたり、基本はすべて人と人のなかで生まれるものだと思っていて、僕自身ずっとそれに助けられてきた。だから僕はこれからも、誰かに夢を与えられる人になりたいんです」。
『純烈」という大きな居場所を見つけた白川さんの表情は柔らかかった。
小島マサヒロ=写真 藤野ゆり(清談社)=取材・文