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前のめりな気持ちは不要。「なんとなく」から生まれる“農”との接点

そんな上田さんは、UFC初期からメンバーとなっている“古参”のひとりだ。渋谷エリアでコンテンツ事業の仕事に携わっている関係でUFC設立イベントに参加し、その場で即メンバーとなった。
上田さん
「それまで、特に農業に興味があったわけではないんです。それでも、UFCの趣旨や活動予定を聞いて何故か『なんとなく面白そうだな』と思ってしまった。そのときの気持ちを説明するのって難しいんですけど、強いて言えば、未知なものに対する軽はずみな好奇心というか」(上田さん)。
興味がなかったことだから、やってみたいと思わなかったことだから、あえてその世界に飛び込んでみたい。現在趣味となっているトライアスロンの場合と同様の実践主義から始まった、上田さんの週末ファーマーズライフ。UFCの仲間たちと農作業をすることで、あらためて“農”に対する興味がわいてきたという。
上田さん
「最初は『なんとなく面白そうだな』という程度の軽い気持ちで参加したのですが、実際に土いじりや野菜づくりにかかわることで、農業の大変さだったり野菜の尊さみたいなものがわかるようになってきて。いまだに遊びのような感覚もあるんですが、一方で知的好奇心を含む『面白さ』が芽生えてきたんですよね」(上田さん)。
イベントの様子
だからこそ、上田さんはUFCの“気軽さ”に魅力を感じているのだとも。
「特に前のめりになる必要がないのって、UFCの良いところだと思うんです。なんとなく楽しそう、という程度の感覚で野菜づくりを楽しんで、そこから“農”との接点が持てる。僕もそうでしたが、これくらいの気軽さがないと、都市生活者が農業や食の問題について考えるきっかけを得ることって、なかなか難しいんじゃないのかな」(上田さん)。
 

大人も子供も、もっと自然に楽しみながら“農”との距離を縮めてほしい

今もなお、軽はずみな好奇心をベースにUFCとのかかわりを続ける上田さんだが、現在では自宅の軒先でトマトを栽培するようになったほか、UFCのイベントに家族も誘うようになったともいう。
上田さんの娘さん
次女の里茉ちゃん[左]と、長女の珠里ちゃん[右]。写真提供:上田さん
「子供たちを誘うようになったのも、特に食育とかそういう気負った姿勢からではなく、自分が体験して楽しかったことを共有したいだけ。まず『楽しい』という感覚が伝われば、そこから自然と、いわゆる食育的な要素につながっていくと思うんです」(上田さん)。
ピーマンの収穫
ピーマンの収穫を楽しむ、次女の里茉ちゃんと奥さま。写真提供:上田さん
誘い始めた当初は、それこそ近所の公園で一緒に遊ぶような感覚で「付き合って」くれていた子供たちも、先日行われた近郊農家との交流&収穫体験イベントでは、梱包などの作業まで、積極的に手伝うようになっていたのだとか。
「子供たちにとっては、そういった作業も『楽しい』のひとつに過ぎないと思うんです。そういう感じで自然と農業に触れたり、作り手と受け手との距離感を縮めたりできるのは、とても良いことだなって。それが、子供たちだけでなく活動にかかわるすべての人たちにとって、UFCがもたらす大きな魅力なんでしょうね」(上田さん)。
上田さん
<都市生活者であっても、自分たちが食べる物を自分たちの手で育てることが当たり前になる社会になったらいいよね>
とは、主催者である小倉 崇さんが語るUFCのコンセプトである。そして、そんな素敵な社会を拓くための道筋は、決して難しいものではない。たとえ“チャラい”動機であっても、その端緒に着くことができるのだから。
そんな上田さんのスタンスは、これから週末ファーマーを目指す男たちの背中を、軽やかに後押ししてくれるはずだ。
玉井俊行=写真 石井敏郎=取材・文


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