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たった3型から始まったヨークの歴史

「コンセプトはジャケットやシャツに合わせるスニーカー。ちょうどビジネススタイルがカジュアル化したタイミングで、セットアップの足元にも収まりのいいスニーカーを作りたいなって思ったんです」。
コンセプトはジャケットやシャツに合わせるスニーカー。
ブランドを立ち上げるべく動き始めたのは妻の妊娠がわかった頃だった。
「相談すれば9割に止められ、1割にひかれました(笑)。ところがうちの奥さんは大したもので、反対らしい反対はしなかったんです。ならばやろうと。時代の潮目を感じていたし、勝算は、ありましたしね」。
ファーストコレクションは3型。現在もつづく「ユリス」「スタンレー」「リリー」だ。
[上]古き良きテニスシューズをモチーフにした定番「ユリス」。[下]「ユリス」に並ぶ定番「スタンレー」。/YOAK(ヨーク)
[上]古き良きテニスシューズをモチーフにした定番「ユリス」。“有機的に、流れるようなライン”という美意識に基づいて引かれたパターンは端正で、美しい。ピッグスキンのフルライニング。2万7000円、[下]「ユリス」に並ぶ定番「スタンレー」。マットなテクスチャーがミニマルなデザインに映える。2万7000円/ともにヨーク(HEMT PR 03-6721-0882)
昨今のトレンドに慣れた目には拍子抜けするほど飾り気がないが(だいたい、ファーストコレクションが3型しかない、というのも驚きだ)、素通りできない引っかかりを感じる。引っかかりの正体は、生産背景、素材、そしてパターンの妙にある。
「ヨーク」のスニーカーは東京の下町、北千住の工場で作られている。そのエリアからも想像できるように、スニーカーの工場ではなく、革靴のそれである。
操業して半世紀を越えるという、商社の時代に知り合った工場だった。老舗と呼ばれるのも伊達ではないと思わせるものづくりに打ちのめされた廣本が、その工場を忘れることはなかった。しかし……。
オフィシャルで作成している、生産背景を伝えるムービーから。全編はブランドサイトで観ることができる。
「とにかく嫌がられました(笑)。スニーカーも同じ靴じゃないかと思われるかも知れませんが、白底はちょっと汚れただけで使い物になりません。革靴に比べればパターンも複雑です。それでも引き下がらなかったのは、ビジネスシーンで履けるという前提をクリアしようと思えば、革靴で培われたその工場の技術、感性が欠かせないと考えたからです」。
型紙の切り方、革漉き、ステッチワーク……ひとつひとつ仔細に観察すれば、廣本が惚れ込んだのも最もな老練の職人技が感じられる。
見逃せないのが「オパンケ」と呼ばれる製法だ。
後編は何やら聞き慣れないこの製法の話から始めるとしよう。
[問い合わせ]
YOAK
https://store.yoaktokyo.com
ヘムト PR 03-6721-0882
竹川 圭=取材・文


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