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「古楽」は即興、ジャムセッション

—バロックあるいはそれ以前の音楽家たちが、「作曲し、楽器もいくつか演奏し、なおかつ即興演奏もする」というのは、現代のジャズミュージシャンとも共通な活動ですよね。とても身近に感じます。
クラシック音楽というと、「作曲家の作品を解釈してきっちりと再現する」芸術に思いますから、聞くほうも前もって知識が必要なのか、身なりなどもきっちりしていなければならないのかと、敷居が高くなっていたりするのですが。

柴田 古楽器奏者たちは、まずは作曲家の直筆譜やその頃に出版された楽譜に立ち戻り、当時の演奏法の書物などを読み解き、その時代の演奏法を再現することを大切にしています。今使われている楽譜には、当時とはまったく違うものとなっている場合も多いですから。
—「古楽」が古典(クラシック)音楽ともっとも違うところはどういう点にあるのでしょうか。
柴田 もっとも大きな差は楽器であり、その音ですね。現代のクラシック音楽では、大きなホールなどの空間で遠くの人まで音を届かせる必要があるので、楽器が出せる音量も圧倒的にボリュームがあります。聴く人に向かって音が押し寄せてきます。
ところが、「古楽」の頃の楽器というのは、例えば宮廷のサロンなど演奏の場が小さかったので、そこまで大きな音は必要ではありませんでした。音が響く教会などでも演奏されていました。古楽器の多くは暖かい音がします。観衆は引き込まれるような感覚になります。
取材時に見せてくれた柴田さんが使うフルート。
—音の作り方にも違いがあるのでしょうか?
私たちはド・ミ・ソは調和していると習います。ところが、実は調和していないのです。なぜなら、平均律といって、ドから次のドまでを便宜上12等分均等に割って音階を作っているから。
本当の音階はそうはできていないのです。産業的な香りもします。産業革命の頃と平均律が普及した頃がちょっとかぶるのも面白いですよね。
ファの#(半音上がる)とソの♭(半音下がる)は、今は同じ音とされていますが「古楽」の頃には同じ音ではなくピッチも微妙に違いました。「古楽」奏者は、こういった微妙な音の違いを徹底的に体感し、演奏できるように努力しているのです。


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