カラダ笑う薬膳●まだまだ老けちゃいないけど、若くもない。37.5歳ってそういう年齢。昔と同じように食って飲んで遊んだ朝は、昔と同じようには起きられない。いろんな曲がり角で悩める37.5歳は、中医薬膳をマスターする“薬膳ママ”の店に今日も行く。
都内某所。飾り気はないが、温かみのある風情。一杯ひっかけるにはちょうどいいおばんざい屋がある。あるのは、5人ほどが掛けられるカウンターのみ。旨いってのは当たり前なのだが、ここの女将がまたヒネリが効いていていい。
人呼んで“薬膳ママ”。
この歳にもなれば起きる体のちょっとした不調を、会話で引き出した情報から、料理で和らげてくれる。今夜もまた常連の男が、目元に生気のない風情で暖簾をくぐる。おっと、いきなり扉に頭をぶつけているようだが……大丈夫か?
目の疲れから老眼まで。食って良くする一品料理を求めて
ママ いらっしゃい。って、いきなり頭ぶつけて大丈夫?
男 おっとっと。このところ疲れが溜まっちゃっててさぁ。
ママ いつもの瓶ビールでいい?
男 うん。
ママ この夏、休み取れなかったの?
男 大量の納品に追い込まれてさ、お盆返上だよ。我が社の働き方改革どうなってんだ!ってね。
ママ ストレスも溜まるわね。もう若くないんだから無理は厳禁よ。
男 今年も夏は暑かったからさ、若いの連れて、キンキンに冷えたビールだけが楽しみだったわ。
ママ あら、付き合ってくれるようになったのね。こないだアナタ「若い子は仕事できるけど飲みニケーションができない」ってグチってなかった?
男 そうそう、あれね。まぁ話してみるもんだよな。麻雀が趣味ってのが一人いて意気投合だよ。
ママ よかったじゃない。
男 でもね、こないだ思い切って一緒に雀荘行かない? って誘ったら、「自分、ネット麻雀派なんで」って断られて(笑)。
ママ ひと筋縄にはいかなね。あ、冷房どう? 冷えすぎてない?
男 大丈夫、気遣い助かるよ。最近、外は暑いけど、室内の冷房キツいってこと多いからね。カラダの調整難しいよ。
ママ 私なんか、最近はカーディガンが手放せないもの。さて、最初の一品は「ししとうのきんぴら」でどうかしら?
男 いいねぇ。野菜不足だし、ちょうどいいよ。あ、そうそう結局、若手の「麻雀くん」とはゲーセンで打ったんだよ。
ママ へぇ、そんなのが今はあるのね。
男 インターネットに繋がってて、違うゲーセンでプレーしている客とネットを通じて打つんだけど、牌の文字が見づらくて、見間違えて切ったら役満振り込み……。
ママ あらあら。はい「ししとうのきんぴら」。
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