テーマに合わせた10曲を「iTunes」から選び、毎月リリースしていくコーナー。セレクターは、ビームス創造研究所 クリエイティブディレクターであり、ビームス レコーズ ディレクターの青野賢一氏。
この原稿を書いている時点では酷暑ですが（そしておそらく今も残暑厳しい気が……）、秋に向けて気分を少しずつシフトチェンジということで、今月のお題は「焚き火」。暑さが和らぎ、それでいてまだ寒くもない秋の初めは、焚き火を囲んで過ごすのに最適な季節です。そんなシチュエーションに合う音楽をセレクトしてみました。
選んだのはギターものやアンビエント、インディフォーク、ジャズなどで、刻々と変化する焚き火を眺めながら、音に没入できるのではと思います。
Continuum / Andreas Arnold
焚き火を囲んでというと、ギターをつま弾く姿が即座にイメージされるという方も少ないくないと思いますが、今回はちょっと目先を変えてフラメンコ・ジャズギターを。ドイツ生まれでブルックリンを拠点に活動するアンドレアス・アーノルドの最新作から。
Four of Five / Khruangbin
春の来日公演、FUJI ROCK FESTIVAL ’19出演と話題を振りまいたテキサス出身のトリオ、クルアンビン。こちらは昨年リリースの『Con Todo El Mundo』を全篇ダブミックスしたアルバム『Hasta El Ciero』からの曲。ベースラインが際立ちます。
Inconstantly Lovely Day / Pedro Ruy-Blas
アーシーなパーカッションと幻想的なシンセサイザー音が心地よいアンビエント調のこの曲は、マドリッドのシンガー・ソングライター、ペドロ・ルイ=ブラスによるもの。収録アルバムは80年代半ばから90年代後半に録音された未発表曲をコンパイルした作品。
In a Small Valley / Ana Roxanne
LAを拠点に活動する東南アジア系のアーティストAna Roxanne。「ジェンダーとアイデンティティ」をテーマにした傑作デビューEPから、水の音や歩行音といったフィールドレコーディング素材と繊細なエレクトロニクスが溶け合う極上アンビエントを。
Ruby Echo / Brandee Younger
ブランディー・ヤンガーは、コモンやロバート・グラスパーとの共演でも知られる女性ハーピスト。2016年リリースのファーストアルバムからのこちらは、ハープとヴァイオリンによる音の応酬も美しいナンバー。焚き火のはぜる音とも合いそうです。
Enumerating / GODTET
オーストラリアはシドニーのプロデューサー、マルチ楽器奏者GODTET。ハイエイタス・カイヨーテのメンバーらが参加したセカンドアルバムからのこちらは、民俗音楽的ボーカルと生演奏主体の心地よいグルーヴでずっと聴いていたくなる魅力的なナンバー。
Into The Woods / Tycho
最新アルバム『Weather』をイギリスの〈Ninja Tune〉からリリースしたティコ。これまでの作品以上に有機的な音の響きを重んじたこのアルバムから、ギターのリフが印象的なこちらを。森へと分け入ってゆくようなイメージのある曲ですね。
Terminal Paradise / Big Thief
ブルックリンを拠点に活動するインディフォーク・バンド、ビッグ・シーフ。最新アルバム『U.F.O.F』に収録されたこちらはシンプルな構造の曲ながら、メロディの美しさと曲の後半に出てくるコーラス・パートに心奪われること間違いなし。
No Cure / Zoe’s Shanghai
Zoe’s Shanghaiはスペイン・マドリッドの新進バンドで、先ごろデビューEP『A Mirage (Meant to Last Forever』をリリースしたところ。全篇にわたるオーガニックな雰囲気がたまらないこのEPのリードトラックがこちら。ジャズ～R＆B好きに大推薦。
Woody Bay/ Hampshire ＆ Foat
イギリスの鍵盤奏者グレッグ・フォートとThe Beesのマルチ楽器奏者ウォーレン・ハンプシャーのユニットの最新作は、ワイト島の教会でアナログ機材一発録りした傑作フォーキー・ジャズ。その中からポリリズミックなこの曲でチルアウトしてください。
＜プロフィール＞
青野賢一1968年東京生まれ。ビームス創造研究所 クリエイティブディレクター、ビームス レコーズ ディレクター。ファッション＆カルチャー軍団ビームスにおける“知の巨人”。執筆やDJ、イベントディレクションなど多岐にわたる活動を展開中。
青野賢一＝文
