ロシアW杯を終え、再び夢の中へ
川島はおそらく、日本サッカー史上、もっとも数多くの“神頼み”を背負ってきたゴールキーパーではないか。その偉大なる守護神に、「あの14秒」のことを聞くと、少し時間をおいてから、口を開いた。
「終わったあとは、すぐに次を考えることはできませんでした。でも、少し時間が経って、自分はロシアで何を得たのか、自分はこの先何をしたいのかを自問自答したんです。そうやって考えていたら、いつしか、まだ夢の中にいたいという気持ちになっていました」。
2019年6月に行われた南米選手権で、若手中心に構成された日本代表の中で、川島は3試合中2試合で先発出場を果たし、改めてその存在の大きさを示した。鬼気迫る表情で、ゴールを守る姿に、頼もしさを感じた人も多かったはずだ。
そのせいか、川島の口から「夢の中」という言葉が出てきたのは、少し意外に感じた。陳腐な表現かもしれないが「責任感」とか「覚悟」といった、暑苦しいくらいストイックな言葉が並ぶと思っていたからだ。
そこで、さらに質問をする。今後の夢は2022年に行われるワールドカップ・カタール大会なのかと。すると、「表現があっているかわからないんですけど」と前置きしつつ、丁寧に言葉を選びながら話を続けた。
「もちろん、次のワールドカップにも行けたらいいなとは思います。でも、それは結果の話。まずは目の前の壁を乗り越えようと挑戦する時間を楽しみたいと思っています。その先にワールドカップがあればいいし、長く海外でプレーできたらいいです」。
こう語る川島の表情は、まるで風のない海のように穏やかだった。
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