>【前編】を読む世界で唯一といわれるカセットテープ専門店「ワルツ」を営む角田太郎さん(49歳)。
前職は14年間Amazon(アマゾン)に勤め、責任ある仕事を担ったが40代を半ばに人生を自分でコントロールしたいという想いが芽生えた。とはいえアマゾンで過ごした時間は角田さんにとってかけがえのないものだったという。
「アマゾンってすごくいい会社なので、14年間、僕は一度も転職したいと思わなかったんですよね」。
アマゾンを離れて自分に何ができるか、考えて行き着いたのが夢中になっていた“カセットテープ”だった。
「独立するなら自分にしかできないこと、世界でまだ誰もやっていないことをやろうと思った。そこでふっと落ちてきたのが“カセットテープ”でした」。
音楽の受け取り方がストリーミング主流になるなかで、アナログもアナログなカセットテープ販売。それも実店舗で。となると“どう考えても成り立たないビジネス”と語るのも不思議ではないが……。そこに勝算はあったのだろうか。
そう尋ねると「起業して絶対にビジネスが成功するという確信を持っている人は、恐らく誰一人いないでしょう」と微笑んだ。
「起業した6割が1年以内に、8割は3年以内に倒産するというデータがあります。うまいことやれそうな事業計画を作ることはできても、実際は行動するまでわからない。ただ話題になるだろうという自信はありました。自分が好きだからこそ、カセットに夢中になる人が世界中にいることは知っていたし、日本のカセットテープカルチャーが世界に遅れをとっていることも理解していたんです」。
事業計画を考え始めたら、逸る気持ちがとまらなくなった。決意してからは早かったという。周囲の人にも別段、相談はしなかった。
「僕の人生ですし、世界で誰もやってないことをやろうとしているわけだから……。角田はどうしちゃったんだ!? って心配はされましたけどね(笑)。妻さえ理解してくれればいいかなと思いました」。
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