>連載「37.5歳の人生スナップ」を読む「肩書きは? って聞かれると困るんですよね。最近は僕自身、自分の肩書きがよくわからなくなってるから(笑)」。
待ち合わせ場所のカフェに現れた橘 豊さん(44歳)。一見、とてもクールに見えた彼だが、仕事について話し始めるとたちまち楽しくてたまらないという表情が輝き始めた。
主に映画や音楽などエンタメ業界のプロデュースやキャスティングを行っているワイルドオレンジアーティスツ。代表取締役を務める橘さんは、前職のアミューズを28歳で辞め、準備期間を経てから独立した。
「キャスティング業っていうとわかりにくいけど、僕の場合はもっとマネージメント寄りのアーティストの売り込みですね。日本の俳優さんを売り込むだけじゃなく、逆に海外の俳優さんを日本や他の国の市場に紹介することもあります」。
いわゆる逆輸入系芸能人のヒットの源泉は、橘さんが立役者となっていることも。表には出せないものの、裏話ではアノ人もコノ人も!? と驚くような時代を彩った著名人の名前が次々と飛び出した。
しかし、面白いのは橘さんの肩書きが、そんなキャスティング事業会社の社長に留まらないところだ。現在、どんな仕事をしているのか尋ねると、次から次へとさまざまな仕事の話が溢れ出した。
「ロスの有名スイーツ、カクテルの輸入など、事業の枠を越えて手を出しています。映画『家族のレシピ』のプロデュースも行いましたし、そのロケ地であるシンガポールのグルメをまとめた『絶品!シンガポールごはん』の執筆をした際は、80店舗以上を巡って、すべて自分で写真も撮りました」。
キャスティング事業、映画プロデューサー、音楽プロデューサー、海外食品の輸入、そして文筆家……。二足の草鞋どころではない。これ以外でも出せばキリがないのだ。
しかし、話を聞くうち、どの仕事にも通じていたのは、彼が“本当に面白いもの・良いもの”を見出すセンスと、即行動に移す瞬発力だった。数多くの顔を持つ橘さんの半生を辿ってみた。
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