連載「24時間365日、いつも一緒。」
仕事もプライベートも、いつも一緒の「夫婦ユニット」。プロフェッショナルとして、夫婦として、四六時中ともに過ごし、関係を保ち続ける彼らのヒケツを教えてもらった。
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榎本聖貴さん、伊藤サチコさんによる音楽ユニット「huenica(フエニカ)」。透明感のある心に沁みるサウンドが特長で、それぞれギタリスト、シンガーソングライターとして活動してきた両者が、2012年に結成した(アルバム『田の人と旅の人』(2016)は
コチラから)。それ以前から恋人同士だったふたりは2014年に入籍。2017年には長男が誕生している。
フエニカのライブはいつも温かな空気に包まれる。ともにクリエイターであるがゆえ、楽曲制作においてぶつかることも少なくない。「対立したときは、険悪になろうと徹底的にやり合う」というが、それでも夫婦として良好な関係を維持できるのは何故なのか? ふたりに話を聞いた。
夫婦だからこそ、理性を取っ払って主張をぶつけ合える
互いのこだわりが衝突したとき、妥協せずに主張を突き通す。それにはパワーがいるし、関係がこじれるリスクも負う。そのため、ときにはどちらかが引いたりして、程良い着地点を探ったりするものだ。
しかしフエニカの音楽活動において、安易な妥協はない。それは、少々のことでは揺るがない関係性を築いてきた自負、互いへの信頼があるからだ。

聖貴さん「ときには歌詞のワンフレーズで揉めて、打開まで数カ月かかることもあります。でも、理性を取っ払って主張をぶつけ合える関係、それでも壊れない関係であることは僕らの強みではないかと思っています。これが夫婦ではなく他人同士の関係だったら、激しくぶつかって亀裂が生じることを恐れてしまう。結果、ぬるいものが出来上がってしまう可能性もあるわけです」
ユニットでの創作活動は、家族以上の関係性があってこそ最大限の力を発揮できると聖貴さんは考えている。一方、妻のサチコさんは、結成当初こそ戸惑ったというが、今ではこのやり方に賛同しているという。

サチコさん「ソロでシンガーソングライターをやっていたときも周囲にスタッフの方はいましたが、基本的に自分の意見やアイデアが優先される環境でした。でもフエニカでやるようになって、それが全然通らなかったり、議論を戦わせるみたいなことが増えて……最初は修行みたいな感じでしたね(笑)。
リアルに喧嘩になったりもして、『曲作るのってこんなに大変だったっけ……?』と思いました。でも、少しずつこのやり方のすごさに気づいた。榎本くんが言うように、“理性を取っ払った先”に想像を超えるものが生まれていく感覚が、とても楽しいと思えるようになったんです」
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