それまで、カーディガンといえば、ジィさんやガリ勉の垢抜けない兄ちゃんがシャツの上からお行儀良く着るものと信じていた。
そこに天変地異を起こしたのが、故カート・コバーンさまだった。のちにグランジといわれる着こなし。ヨレたTシャツの上にどうでもいい感じのカーディガンを気だるく羽織った姿は、衝撃的だった。そう、カーディガンはそのとき、従来と真逆の価値となるユースカルチャーのもの、ロックンロールなものになったのだ。
まだまだ、いや生涯ずっと枯れたオヤジになりたくないと願うフリーダム派な諸君。キミたちはカーディガンの下にお行儀良くシャツなんて着なくていい。それを後押ししてくれるのが、あのグッチだ。
クリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレによって、従来のラグジュアリーな世界観にとびきりポップでユニークなテイストが加わり、新たなファンを続々と獲得。ブランドの“若返り”で大成功している。
いい大人が、グランジ? そう眉をひそめるヤツに、この魅力は一生わかるまい。
GUCCI グッチ
ビビッドなボディにGGロゴと「Rainbow」のフレーズを大胆にあしらったTシャツは、ヘヴィメタルをはじめとする音楽からの影響が色濃い今回のクルーズコレクションから。一方で、羽織ったクラシカルな表情のケーブルニットカーディガンはカシミヤ混ウール素材。
メゾンの矜持を感じる極上の心地良さが味わえる。細めの黒デニムで引き締めて、クリーンなグランジを気取りたい。
清水健吾=写真 菊池陽之介=スタイリング 松本和也(W)=ヘアメイク 今野 壘=文