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第二章:2001年~2010年
メガネとユーザーの距離が一気に縮まる

個性を重んじる機運が高まる中で21世紀を迎えて早々、メガネ選びに早くも激震が走る。「ジンズ」「ゾフ」を筆頭とする新規参入の大型メガネ店が相次いで登場し、「ファッションとしてのメガネ」が急激に身近な存在になったのだ。
度入りレンズの加工も含めた仕上がりの速さとSPA(製造小売り)によるアンダー1万円という価格帯、豊富なデザインは、ユーザーが感じていたメガネの“仕方なさ”を払拭して一気に距離を縮めたうえに、いろんなデザインや色のフレームを“着替える”楽しさを浸透させた。
この革命的な出来事は、実はアイウェアに潜在的に興味を持つユーザーに門戸を開き、よりハイクオリティで個性的なフレームを求める流れを作っていく。
ブームにもなったメガネ男子という言葉。メガネを掛けた著名人を登場させた写真集『メガネ男子』(アスペクト)も人気を博した。
それを裏付けるように2005年には『メガネ男子』(アスペクト)なる写真集が出版され、視力の矯正器具としてメガネを必要としない層からの関心も高まってきたことが窺える。そんな波乱に満ちた2001~2010年はトレンドも大きく様変わりした。
2005年までは天地幅の狭い長方形のフロントに太いテンプル、チタン素材を駆使したパーツを搭載した、いわばハイテクスニーカーのようなデザインが主流だったが、2006年に英国の老舗「オリバーゴールドスミス」が復刻シリーズを発表すると、時代は徐々にクラシックへと舵を切っていった。
国内でも時を同じくしてロックをテーマとした「エフェクター」がデビュー。レンズの天地幅が広めのボリューム感ある黒セルフレームが醸すナードな雰囲気が、ストリートファッションや音楽シーンにハマり、次第に支持層を厚くしていった。
エフェクターの代表作「fuzz(ファズ)」。
このムーヴメントはビッグシェイプ&ビッグロゴが定石だったハイブランドのサングラスにも影響を与え、クラシックなデザインが多く取り入れられるキッカケにもなった。デザインで特に人気が集中したのがウェリントンタイプだったが、この時点で既にコアなメガネ好きはほかとは違うデザインを求め、ボストンタイプやサーモントブロウタイプなど、さらにギークなデザインへと移行することとなる。
リムの上部はプラスチック、下部はメタルで縁取られたサーモントブロウタイプ。
この現象をとあるアイウェアデザイナーは「9・11やリーマンショックによって、一般ユーザーの将来に対する展望が変わった。メガネも、先へ先へと進むよりも、確かなモノや堅実なモノ、地に足の着いたデザインに安心感を求めた結果かもしれない」と言う。
そんな状況から再び元気を取り戻し、活気あるデザインが徐々に増え始めたのが2010年以降のことである。


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