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第三章:2011年~
ファッションとメガネがイコールで結ばれる

2011年以降は最もトピックが多く、現在もその激しい変化は続いている。アメカジやトラッドとの親和性が高いクラシックの選択肢はますます広がり、NYの老舗「モスコット」やジョニー・デップ愛用のヴィンテージを復刻した「ジュリアス タート」をはじめとするアメリカンヴィンテージに加え、フレンチヴィンテージも参戦してきた。
モスコットのニューヨーク本店。日本でも、東京・青山の骨董通り沿いに路面店をオープンしている。
複雑な構造の折り畳み式やクリップオンフリップアップなど、さまざまなギミックを搭載したものも多く輩出されるようになった。
ハイファッションとの結びつきはこれまでになく密接で「マスナガ」と高田賢三、「マイキータ」とメゾン マルジェラ、「ディータ」とトム ブラウン、「金子眼鏡」とイッセイミヤケ、ニコルの創設者、松田光弘が立ち上げたアイウェアブランド「マツダ」の復活などなど、大御所がこぞって本格的なグローバルコレクションを立ち上げている。
現在も展開中のマイキータとメゾン マルジェラによるコラボライン。アイウェアブランドの技術とファッションブランドのセンスが融合した、ファッションピースとしても優秀なコレクション。
同時にジャパンブランドの世界進出も目覚ましく、前述の「マスナガ」と「ファクトリー900」がフランスの国際アイウェア展示会のアワードで揃い踏みするなど、クオリティだけでなく、日本のデザインの優秀さが世界でも認知され始めている。
このようにクラシックは一過性のトレンドからひと皮剥けて、定番として浸透していったが、その一方で技術革新やレンズにも目が向けられたのもこの時代の特徴だ。
なかでも3Dプリンターを駆使したフレームは白眉で、既存のセルフレームでは表現できないフォルムを実現した「マイキータ マイロン」、軽くて上部なチタンならではの意匠を具現化したフレームの「フート」は、3Dプリンター技術にできることを、身をもって証明してくれた。
レンズを介したさまざまなアプローチがなされたのも特筆すべきことで、「フォーナインズ」はメガネで蓄積した掛け心地へのノウハウをサングラスに取り入れた「フォーナインズ・フィールサン」を、「ジンズ」はブルーライトカットに特化したレンズを搭載したPCメガネを提案するなど、より多くの人がさまざまなアイウェアを楽しめるキッカケ作りに貢献している。
[上]平らで薄く、シャープな印象のメガネを作ることができるフラットレンズ。[下]室内でも外す必要がなく、相手から目が見えるので柔らかな印象になる薄色カラーレンズ。
さらに’80年代を席捲したミラーレンズの再来や、室内でも違和感なく掛けられる薄色のカラーレンズ、光を反射するフラットレンズ、軍用から発展したマットレンズなどをスタイルとして取り入れたサングラスは、デザインだけでなくレンズも選ぶ、という新たな選択の道を我々に与えてくれた。
 

ーー2019年。メガネは我々に寄り添う時代に

平成のアイウェア史をざっと辿ってみたが、実は今こそ、最もオーシャンズ世代がメガネを選びやすい時代だと言える。
というのも、我々世代の多くはファッションのコアにアメカジがあって、そこからトラッドやストリートスタイル、あるいは上質な素材で再構築した大人のカジュアルを謳歌している。
今まさにアイウェア業界では同じことが起こっており、クラシックをベースに新たな枝葉が伸びている状態なのだ。
無理して奇を衒ったデザインを選ぶか、スタンダードなものを選ぶかしかなかった昔とは違い、今は我々にメガネが寄り添う時代。
さあ、自分の“おメガネに適う”デザインや背景を持つブランドを見つけに、アイウェアショップへ繰り出そう。そして、見える世界を変えようじゃないか。
 
實川治徳=文


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