去る1月にスイス・ジュネーブで開催された「SIHH2019」「WPHH」を中心とする腕時計の祭典。本誌取材班は今年も海を越えてかの地へ。そこで見た感動と世界の目利きたちが唸った傑作を厳選してお届けする。
今年のエルメスは年間テーマに“夢を追いかけて”を掲げ、時計にもメゾンに相応しい夢を具現化する。
ムーンフェイズの新たなクリエイションやニューコレクションなど、充実の年が始まった。
変化を続ける美しさは、まさに腕元の宇宙
時という概念が天体の動きから生まれたように、天空は常に人の夢を掻き立てる。今年誕生したムーンフェイズウォッチは、文字盤の上下に北半球と南半球から見える月をレイアウトし、時分表示用とカレンダー用のサブダイヤルが59日間で1周。時の流れに伴いそれぞれの月齢を示す。アヴェンチュリン文字盤は煌めく星空を表現し、回転するサブダイヤルによって見るたびに、印象を変える。メゾンに相応しい優雅かつ壮大な演出だ。
アイコンウォッチがモダンに原点回帰
上下非対称のラグを備えた「アルソー」に、ブラスト仕上げのチタン製ベゼルと、表面が細かい粒状になった文字盤を組み合わせ、現代的な魅力を添える。モデル名の“78”は、誕生年の1978年に由来し、同年に創業した時計事業を担うラ・モントル・エルメス社にもオマージュを込めている。
メゾンの夢は過去から現代、そして未来へと続く
馬具をモチーフにした流線形フォルムは、宇宙船のような未来感とともに、過去から現代へと受け継がれるメゾンの伝統を表現する。個性的なラグの造形、徐々に大きさが変化するインデックス、6時位置に据えられたリュウズなど細部へのこだわりもメゾンならでは。
話題になった黒くて丸いオブジェ
ブース中央に設置された地球を表す直径約3.5mの球体。実は、その表面は無数の太陽電池でできていた!
このインスタレーションの仕掛け人は、なんと日本人の吉本英樹さん率いるデザイン・スタジオ、Tangent。
※本文中における素材の略称:K18=18金、WG=ホワイトゴールド、SS=ステンレススチール
柴田 充、水藤大輔=文