伝説の青い閃光が、再び路上に躍り出た!
若い人には耳新しい存在なのかもしれないが、アルピーヌといえば、1970年代にはラリーなどのモータースポーツでその名を轟かせた、フランスきっての名門スポーツカーブランドである。
なかでもスタープレーヤーとしての人気を誇ったのが、1963年に登場した「A110」。RR(リアエンジン・リアドライブ)というポルシェ911と同じ個性的な構造から、モーターファンたちの間ではしばしば仏独の好敵手と目され、注目を集めてきた。そんなアルピーヌが紆余曲折を経てついに蘇り、昨年から日本でもローンチされたのだ。
蘇ったモデルの名前は往年のスタープレーヤーと同じ「A110」であり、独立型の4灯式ヘッドランプをはじめとするデザインボキャブラリーもオリジナルを継承するが、その内容は大きく異なる。復刻したのはその名前とレガシーであり、中身は最新鋭のテクノロジーの粋を集めたものとなっている。
ライトウェイトスポーツの鑑
低く構えた流麗かつアグレッシブなスタイルは、まさにスポーツカーそのもの。構造は、かつてのRRからMR(ミドシップエンジン・リアドライブ)へと変更。1.8L直4ターボエンジンは、最高出力252psを叩き出す。全長4205×全幅1800×全高1250mm、車両重量1110kg(A110ピュア)、1130kg(A110リネージ)というライトウェイトスポーツの鑑というべきもので、年々車体サイズが大きくなっていく自動車業界にあって、清々しいほどの割り切りとして好印象を受ける。
人も荷物も載って、高速道路もオフロードも走れる――そんなコンセプトのSUVが全盛の昨今、運転して純粋に気持ちのいい車を、その輝かしい伝説に重ねて蘇らせてくれたことに、感謝の念すら覚えるほどだ。
乗員数は2名だから、これ1台では3人以上の家族旅行にも行けないし、サーフボードもBBQセットも載せられない。不便な点はいろいろあるが、それゆえの走りに対するピュアな情熱が、この車をあらゆるディテールから形づくる。リアに向けて深く絞り込まれたサイドラインと、尻下がりのショルダーライン。無駄な贅肉を微塵も感じさせない造形は、停まっていても疾走感を漂わせる。
レーシーな仕様が昂ぶらせる、質感の高いインテリア
中に目を向けると、フローティング式のセンターコンソールや、ダイヤ柄ステッチの入ったサベルト社製フルバケットシート、センターステッチの入ったフラットボトムステアリングなど、随所に盛り込まれたレーシーな仕様が走る前から心を昂ぶらせる。
ドアの内張りに採用したトリコロールは、フレンチスポーツとしてのアイデンティティを誇らしげに主張する。
「A110」には、そのサイズゆえちょっとした工夫や手間は必ず必要になる。だが、それを面倒と思わせないだけの魅力がある。個性がある。ほかの何にも似ていない、唯我独尊の存在。「誰とも被らない自分」を目指す男には、これ以上の選択肢はないだろう。
[問い合わせ] アルピーヌ コール 0800-1238-110 https://alpinecars.com/ja/大野重和=文