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看板娘
「お待たせしました〜」。
今回の看板娘は雅(みやび)さん。年齢は26歳で、ふだんは円山町の「和(やわらぎ)」というスナックで働いているが、毎週木曜だけこの店を手伝っているという。
さて、料理は何がいいですかね。
メニュー
やはり手書きのメニューは味わいがある。
「店長のハプさんが辛いものにハマっていて、先日まで本場の四川省に研究旅行に行っていました。その成果として、カレーや火鍋風おでんの麻辣串がメニューに加わったばかりです」
ハプさん?
「あ、ハプニング鈴木っていう名前のパフォーマーさんなんです」
聞けば、電撃ネットワークのライブに衝撃を受けて女性ふたりの過激パフォーマンスチームを立ち上げた人物だそうだ。
看板娘
看板娘とおどけるハプさん。
ハプさんの前には辛そうな火鍋。
火鍋風おでん
こちらが火鍋風おでんのスープとなる。
取り急ぎ、ラム肉(200円)、シューマイ(100円)、きくらげ(100円)を注文。雅さんが好きだという千切りピーマン(200円)も追加した。
メニュー
いいですねえ。
ラム肉の野趣、シューマイの肉汁、きくらげの食感を味わいながら、箸休めでピーマンをかじる。スープが美味し過ぎて完飲した。
さて、雅さんにずっと気になっていたことを聞いた。店の入り口に球根らしきものがあっていたんですが、あれは何ですか?
ヒヤシンスの球根
自転車のカゴに入っていた。
「ヒヤシンスの球根ですね。店の中に置いてあったんですが、一向に花が咲かないから最終手段として外に移しました」
雅さんはファッションも独特だった。
ファッション
白菜のサンダルに謎柄のストッキングを合わせる。
そんな看板娘はお酒が大好きだ。
「毎日記憶をなくすぐらい飲んでいます。酔ってもあまり変わらないと思っていたんですが、こないだ友達に『ニコニコ接客してるけど、気に入らない人は心の中で殺してる』と言ったらしいです(笑)」
いいぞ、面白い。
談志の金言
壁には談志の金言。
とはいえ、雅さん目当てで毎日のように現れる客も多い。13年前の開店当時からの常連、「ジョーさん」もそのひとりだ。
常連さん
ニックネームの由来は「JOE」と書かれた帽子を被っていたから。
「黒ホッピーしか飲まないんです。料理を食べないことを申し訳ないと思っているのか、よく私とかにお酒をおごってくれます」
そんな話を聞いているところへ、タイミングよくジョーさん登場。ツーショットを撮りたいと言うと、雅さんが何やら赤い帽子を持ってきた。
「仙台出身のハプさんが愛してやまない気仙沼のゆるキャラ、『ホヤぼーや』の帽子です。ジョーさん、これ被ってよ」
看板娘
80年代のアイドル、徳丸純子のエプロンはジョーさんからもらったもの。
看板娘の印象を聞くと、ハプさんは「いつも元気で愛くるしい。あと、オシャレだよね」。一方で、ジョーさんは照れ隠しなのか「普通の女の子じゃない? 今時の」と素っ気ない。
雅さんには最近楽しかったことを聞いた。
「3泊4日で西表島に行ったんですよ。現地に移住して自給自足の生活を送っている知り合いに会いに。家も手作りで感動しました」
バスルーム
建設費用は約200万円で写真は自慢のバスルーム。
馬で畑を耕し、イノシシを狩って、蜂を育てて蜂蜜を作って生計を立てているそうだ。帰る際は石垣島行きのフェリー乗り場で再会を誓った。
看板娘のプライベート写真
奥左がその移住人。
しかし、店名の「あばら家」に則してガチャガチャとした内装だが、非常に落ち着く空気が満ち満ちている。
読書コーナー
常連客が持ち寄った漫画が置かれた「読書コーナー」。
なお、今回の取材では最後の最後に不思議な“事件”が起きた。思い出したように雅さんが言うのだ。
「そういえば、店のトイレの天井に謎の穴が空いているんですよ。気付きました?」
先ほどトイレには行ったが気付かなかった。たまたまトイレから出てきた女性客も「え、そんなのありました?」と首をひねる。
トイレ
初対面の女性同士でトイレの天井を見上げる図。
それは想像以上に「謎の穴」だった。
穴が!!
何の用途に使われていたんだろう。
ハプさんも「誰も知らないのよ」と言う。雅さんは「私は宇宙に繋がっていると思っています」。ここで、感極まったような顔をした女性客が口を開いた。
「あれ、私の夢にいつも出てくる穴とまったく同じなの。夢の中では宇宙に繋がっているという設定も一緒」
奥渋には地球と宇宙を結ぶワームホールがあるのかもしれない。不思議な気持ちになりつつ、お会計。最後に読者へのメッセージをお願いします。
メッセージ
周囲を引き立てることを忘れない看板娘。
【取材協力】
横丁酒場 あばらや別館
住所:東京都渋谷区宇田川町37-14 塚田ビル1階
電話番号:03-5738-9494
www.facebook.com/abaraya.bekkan/
石原たきび=取材・文


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