楽しい「日“洋”品」案内
その名の通り日々の「用」をこなすための日用品。それが、日本では見られないデザインや機能を備えた“洋モノ”になると気分が上がる。男にとって日用品ってそういうもん。春の新生活に向けて集めてきました、世界の役立つ「日“洋”品」。
柳宗悦が“用の美”という言葉を作ったように、機能に優れるものはある種の美しさを持つ。
ときにアートピースのような……という基準で、世界の美術館のパーマネントコレクションを探して見つけた日用品。ここに開演、我が家の“日用”美術館!
「ディ・ノイエ・ザムルング美術館」収蔵
マーク・ニューソンの水切りラック
最先端の技術とデザインによって、日常に変化と発見を生むブランド、マジス。この水切りラックも、等間隔に配置された突起によって、向きの縛りなく自由に皿やコップが配置できる機能的デザイン。
ラック内で倒れて忘れがちな箸やスプーンを入れられる2つの円筒形のホルダーを備え、水アカがつきやすいトレイ底部は外して丸洗いできるのもありがたい。
デザインを手掛けたマーク・ニューソンは世界屈指のプロダクトデザイナー。本品はドイツ・ミュンヘンに本館を構えるディ・ノイエ・ザムルング美術館のニュンベルグ別館に2000年から収蔵されている。
「フランス国立近代美術館」収蔵
ステファノ・ジョバンノーニのほうきデザイナーはイタリアのステファノ・ジョバンノーニ。フィレンツェ大学の建築学部を卒業後、建築家としてだけではなく、数々のインテリアやインダストリアルデザインを手掛ける。これまでデザインを提供したクライアントには、カッシーナ、フィアット、シーメンス、TOTOなど、世界の錚々たる企業が名を連ねる。
こちらのほうきの名前は「マーゴ」。マーゴはイタリア語で「魔法使い」を意味し、目の覚めるような色使いはそれだけで気分が上がる。置きっぱなしでも部屋のアクセントになってくれるかわいいデザインも、ジョバンノーニの“魔法”なのだ。
「ニューヨーク近代美術館(MOMA)」収蔵
ゲディのトイレブラシ
世界でも随一と評価される日本のトイレ。こちらのトイレブラシも、聞けばイタリアで活躍する日本人デザイナー、蓮池槇郎氏によるもの。
ホルダーへの収納時は、見せたくないブラシ部分がホルダーの中に収まり、ホルダーとブラシ部分が一体化して美しい曲面を作る。柄の根元から角度が付いているため、便器の内側やへりの洗いやすさも抜群。
世界で活躍する日本人デザイナーが手掛け、MOMAでも認められたとあれば、改めて「日本のトイレは世界一」と思わせてくれる逸品。
「ニューヨーク近代美術館(MOMA)」収蔵
カール・メンテンスのコップバランスカップと名付けられたこちらは、文字通り絶妙なバランスで中身が空の状態ではこのように傾いており、飲み物を満たすとどんどん垂直になっていくよう計算されている。残量を自らの傾きで表現するユニークなコップだ。
素材は一般的なステンレスに比べ、ニッケルを多く含み、腐食や錆びに強く、光沢がある最高クラスの「18-10ステンレス」を使用。保温効果のある二重構造で、長く温度を保つ。いつもと違った気分でパートナーと“傾ける”のに最適なコップでは。
「ヴィクトリア&アルバート美術館」収蔵
ジャスパー・モリソンのボトルラック
世界中で影響力を持つプロダクトデザイン界の重鎮、ジャスパー・モリソン。ミニマルながら機能的で、どこか可愛らしさを感じさせる彼のデザインは、日本でも無印良品などで多く取り入れられ人気を博している。
こちらは、それまで木やアイアンが当たり前だったボトルラックを、ポリプロピレンとアルミのパーツを組み立てるシンプルな構造で再構築。しかしながら750mlのワインボトルなどを6本収納でき、いくつものラックをスタッキング(積み上げ)できるという機能性を備え、色は上のホワイトと、下のクリアの2色を用意。
使わないときは解体して小さく収納できるから、ストックのボトルが増えたときやパーティのときなど、必要なときだけミニマルに活躍してくれるだろう。
見た目だけでなく、機能やコンセプトも優れた美術館収蔵アイテムたち。あたなの家の「“日用”美術館」コレクションに収蔵されるのは、どれ?
伊藤良輔=スタイリング