OCEANS

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看板娘
「お待たせしました〜」
フードはメニューを開いた瞬間に決めた。「大人のミートボール」(1080円)だ。
大人のミートボール
見た目がなんともそそられるではないか。
注釈には「国産の合挽肉を使った塊肉をイタリア産のトマトで一晩煮込む」とある。どんなものかわからないまま、字面だけで「半熟卵のウフマヨ」(300円)もオーダーした。
オーダーしたメニュー
美しいトライアングルが完成。
キレのあるレモンサワー、花山椒が鼻腔をくすぐるミートボール、意表を突いて冷製だったウフマヨ。どれも素晴らしい。ウフはフランス語で「卵」、マヨはそのままマヨネーズを指す。
料理
自家製のマヨネーズソースが「ウフ」を引き立てる。
今回の看板娘は華乃子さん(26歳)。先ほどのティッシュは店のストックが切れたため買ってきたものだが、自身もひどい花粉症なので助かったという。
働く看板娘
予約の電話にテキパキと対応する看板娘。
華乃子さんは東京の西端、高尾で生まれ育った。
「本当に田舎で、小さい頃は山と川が遊び場でしたね。兄と一緒にホタルを見に行ったり、おたまじゃくしを捕まえたりとか、そういう感じです」
たまたまオーナーと知り合ったことが縁で、3年ほど前からこの店で働き始めた。自分でも接客業は天職だと思っている。
「年に数回、お店に来てくださるアメリカ人のお爺ちゃんがいて、最初の来店時に私が作って店で流していたプレイリストを気に入ってくれたんです。フォー・トップスやスティーヴィー・ワンダーの懐メロで、彼にとっては青春の曲なんでしょうね」
看板娘と常連客
好きな曲が流れるとご機嫌になって口ずさむお爺ちゃん。
華乃子さんは高校を卒業後、専門学校に入学。語学とホテルの接客を学んだ。
「ホテルのインターン研修では徹底的に正しい敬語を叩き込まれました。だから、若い子が『よろしかったですか?』って言ってるのを聞くと、『「よろしいですか?」でいいんだよ』って注意しちゃいます(笑)」
その後、なぜか有名なアパレルブランドに就職。渋谷と新宿のデパートで販売員として働いたが、「これが本当に自分がやりたかった仕事なのか」と自問する日々が続く。熟考した末に退職を決意し、縁あってこの店のスタッフになった。
華乃子さんに趣味を聞くと「旅」という回答。カリフォルニア州サンタバーバラにある「Knapp’s Castle」という古城の遺跡で撮った写真を見せてもらった。
看板娘のプライベート写真
おお、いいですね。
「写真を撮ってくれているのはタクシー運転手のおじちゃんなんです。この場所の情報がほとんどなくて、大まかな住所で一緒に探してくれました。今でもたまに連絡を取り合っていますよ」
ちなみに、「hachi」という店名がずっと気になっていたが、8がオーナーのラッキーナンバーで、末広がりという意味もあり、さらに横にすると∞(無限大)というのが由来とのこと。
店名の由来
「幸せを招く」というブタの置き物も出迎えてくれる。
なお、店には2階もあった。楽しそうな笑い声が聞こえてきたので覗いてみると、3月で定年退職する方の送別会が催されていた。
店内の様子
主役は左端の紳士、長い間お疲れ様でした。
1階に戻るとカウンターのお客さんと華乃子さんが音楽トークで盛り上がっている。
看板娘とお客さん
「今年のフジロックはやばいっすね」
「私、行ったことないんですよ。わあ、TORO Y MOIも出るんだ」
フジロック
DANIEL CAEASARとALVVAYSも観たいそうです。
せっかくなので、彼らに看板娘の印象を聞いてみると、「じつは初対面なんだけど、いいタイミングで話しかけてくれてうれしかった」「BGMの選曲がいい。この店、トイレの天井にもスピーカーがあるんすよ」。
華乃子さん、どうやら誰をも幸せにするオーラを放っているようだ。
店内
アメリカ人のお爺ちゃんもここで涙を流したのだろうか。
さて、お酒も食事も、そして人も最高だった。お会計をする前に華乃子さん、その最高なパンツはどこで買ったんですか?
看板娘ファッション
履きこなす自信はないが欲しい。
「これは、イギリスのテキスタイルデザイナー、ウィリアム・モリスのブランドとH&Mとのコラボ商品です。たしか5000円ぐらいでした」
さすが、元アパレル販売員である。
イベント情報
4月13日にはこんな熱いイベントも。
では、最後に読者へのメッセージをお願いします。
メッセージ
人を包み込むような字でした。
【取材協力】
スペイン ワインバル 人形町 hachi
住所:東京都中央区日本橋小舟町14-12
電話番号:03-6231-1817
www.bar-hachi.com
石原たきび=取材・文


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