あなたは今まで、どんなスニーカーに心を掴まれただろうか。デザイン? 機能? でもそれだけじゃないはず。そこに作り手のセンスやユーモアが光るものにこそ大いに刺激を受けてきたのではないだろうか。それを改めて教えてくれるのがスーパーブランドのスニーカーなのだ。
JIMMY CHOO ジミー チュウ
春に履く、桜色。これぞ、日本の粋。
ハイカットの「コルト」は踵に3つだけ、スリッポンの「グローブ」はアッパーに、ともにスタースタッズをあしらったブランドを代表する人気モデル。そこに新たに仲間入りしたのは、春を感じる「SAKURA」と名付けられたカラーだ。
耐久性と撥水性に優れたしなやかなソフトレザーは、傷みに強く、多少の雨なら問題ないそうで、桜の咲く頃に降るあいにくの春雨だってヘッチャラ。季節を感じさせるスニーカーを選ぶなんて粋だし、それが日本人の春に欠かせない桜だなんて、なんとも風流なのでは。
DSQUARED2 ディースクエアード
巨大なのに軽快に見える、バランスの妙
ミリタリーやスポーツにフォーカスしながら、得意とするデコラティブな要素も多分に盛り込んだ今季のディースクエアード。そんな主張の強いウェアに引けを取らず足元で存在感を放っていたのが、この「ザ・ジャイアント」だ。
いまだ廃れを知らないダッドスニーカーというジャンルにおいて、これでもかとボリューミーに巨大化させ、突き抜けた存在に。もちろん、むやみに大きくさせたわけではない。実用的で歩きやすいバランスは崩さず、ポップかつアクティブなカラーリングで重厚感を払拭。その意外性も楽しみたい。
TOD’S トッズ
足元にウルサイ、靴とクルマのタッグ
インラインとは別に、才能あるディレクターを迎えて発表するプロジェクトの第2弾が、韓国人プロダクトデザイナー、ソク・ヨンベのデザインした「トッズ ノーコード シューカー/02」だ。カーデザインに携わる経歴を活かし、流線形のデザインで、内装にも使われるEVA素材をアウトソールにチョイスするなど、軽量化と優れた耐久性を実現させた。
さらに、カーフレザーとニットで構成されるアッパーは、ネオプレン素材のライナーを備えることで、歩行時のブレを軽減。クルマも靴も、“足回りの良さ”を追求するだけあり、高い完成度だ。
DUNHILL ダンヒル
コートシューズに込めた、職人魂と高機能
精悍なデザインと実用性の高さで安定した人気を誇る、クラシックなコートシューズ「ラディアル ロートップ スニーカー」。今シーズンは、持ち味であるシンプルさを損なうことなくアップデートに成功。イタリア製の高級ホワイトカーフレザーをベースに、タンにはグレースエードを、踵に鮮やかな赤を挿し、素材と色のコントラストで遊んでみせたのだ。
ビブラム社が軽量ラバーソール「Vi-Lite」に、ダンヒルのためにアイコンであるエンジンターン模様を入れて提供。わずかなアレンジ、見えない部分へのこだわりと、繊細なアプローチが光る。
COACH コーチ
レザーに強いブランドによる上質ダッドスニーカー
クラシックなランニングスタイルを踏襲したフォルムのアッパーに、ボリューミーなソールを融合。そしてメッシュ、ラバーをメインに、ヒールカウンターにはシボの入った上質な表革を、トウやシューレースホール部分にはスエードを使用。良質なレザーアイテムを手掛けるコーチらしく、ファッションマーケットを席巻し続けるダッドスニーカーに上品さをプラスしてみせた。
その大人らしさ、そして「C143 カラーブロック ランナー」の名が示すとおりの好配色は、シンプルコーデに効果てきめんだ。
BERLUTI ベルルッティ
ドレスシューズと見紛う、上質な作り
シンプルデザインでスニーカーが苦手な人でも手軽に取り入れられ、人気を博したベルルッティのスリッポン。その最新モデルは、ブランドが誇る門外不出の「パティーヌ」という色出し技法によるヴェネチアレザーのボディに、ソフトで柔らかい子牛の革でヴィッテロレザーをパッチワークし、異なる素材によるコントラストが楽しい一足に。
最高品質の革とその上を美しく走るステッチは、これがスニーカーであることを忘れさせ、レトロスタイルも相まってドレス靴と見紛うほど。形状記憶のインソールで履き心地の良さも折り紙つき。
BALLY バリー
テニスの名選手が愛用したモデルをリバイバル
バリーと同じくスイス生まれのテニスプレーヤー、ヤコブ・ラセクが着用した1991年発売の名品「チャンピオン」。彼の愛称を取って復刻されたのがこちらの「クーバ」だ。
コントラストを利かせたカラーリングと、タンに配されたアーカイブのロゴがなんともポップでキュートな雰囲気。アッパー各所に配されたパーフォレーションやメッシュのライニングで高めた通気性、EVAミッドソールとスポーツブランドに引けを取らない機能性に、スポーツマンが愛した理由が表れる。
SALVATORE FERRAGAMO サルヴァトーレ フェラガモ
近未来的一足は、後ろ姿がアイキャッチ
スポーティなソックスタイプのスリッポン「アンサー」。フィット感に優れるネオプレン素材のアッパーに、ホワイトラバーをトリミングしたデザインは、シンプルながらまるで宇宙船のような近未来的な雰囲気だ。
そしてブランドのロゴやシグネチャーモチーフである「ガンチーニ(鉤型フック)」がヒールにリフレインされ、後ろ姿もサマになる。そんな遊び心に溢れるからこそ、サルヴァトーレ フェラガモの靴は1927年の創業から現代にいたるまで長く愛されてきたに違いない。
渡辺修身=写真 石黒亮一=スタイリング 谷中龍太郎=文