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“ハマる”を超えて、使命感で走り続ける

2015年、42歳で起業した林さんは現在、LOVOT(ラボット)の事業に対し約57.5億円にのぼる資金調達を完了させている。生み出すプロダクトにいくら自信を持っていたとしても、並大抵の精神力では重圧には耐えられないだろう。自分のやっていることは使命なんだ。そう思えるプロセスがあったからこそ、林さんは経営者としてブレずにいられる。それは、“ハマる”ことが原動力となっていた林さんが初めて、ハマる以外の部分で感じた情熱だった。
「ハマることは、どこかで飽きるんですよ。飽きるってネガティブに語られがちだけど、好奇心がある以上、飽きる要素は避けられない。でも外から見てなんでこんなにがんばり続けられるんだと思えるような人は、恐らくハマるを超えた、ある種の祈り、信心深さみたいなものを身につけているんだと思います。それが俗に“使命”と表現されるものなんじゃないでしょうか」。
林要
ハードやソフトなどの技術者をはじめ、さまざまな職種のスタッフが集結。現在は約100名のスタッフとともにラボット開発に勤しんでいる。
仕事が使命になってしまえば、それはもうハマるハマらないの範疇を超越した、夢中にならざるを得ないモノとなる。
「俺の好きなように作るんだ!という情熱だけでリスクを背負い貫こうとしても、なにかあるたびに“自分のワガママなんじゃないか?”と自問する事になるので、かなりの強さが必要なんです。でも使命となったら踏ん張れるじゃないですか。よく経営者が『社会のために~』と使命感を口にするのは、逆に言えば、その使命感がなければ、精神的に耐えられないんだと思います」。
使命によって突き動かされ、その使命がまた自分を支えている。ハマる、の先にある、静かで消えることのない灯火が、使命と呼ばれるものなのかもしれない。現在の林さんの「使命」は、人が幸せになるロボットを作ることだ。
ラボット
愛らしい表情を浮かべるラボットたち
「ラボットの面白いところは、内側は極めて合理的かつロジックで構築されながらも、外側は情緒的な製品だということ。ロボットに対して僕たち人間は仕事や家事をしてくれたらいいな、っていうところから入りがちだけど、本当にそれが今のロボットの一番得意なことかどうか考えて行き着いた結果でした」。
テクノロジーで追求したのは利便性や効率ではなく、愛する喜びを噛み締められるロボット。癒される、愛しい、幸せ……どれも定義するのは難しいが普遍的に我々が求め続けている感情やニーズを、限りなくロジカルに突き詰めた存在が、ラボットなのだ。今秋に発売を控え、いよいよプロジェクトは佳境に入っている。
「現在は量産に向けた試作の終盤です。ソフトウェアは毎週のように進化していますし、ハードウエアに関してもあと2世代は進化予定。量産までに進化の限界をどこまで上げられるかが勝負ですね」。
ラボットを見つめ、楽しそうに話す林さん。飽きずにいつまでも愛されるロボットを……。いくつものハマると飽きるを繰り返して林さんがたどり着いた消えない情熱の源は、「だれかを幸せにしたい」という使命感だった。

藤野ゆり(清談社)=取材・文


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