モデル・大石学さんは無類の旅好きだ。2013年、37歳のときには世界一周旅行を敢行している。それでも「まだ見ぬ世界」を求めて最近はトレッキングにどハマり。2019年は正月早々ネパールへヒマラヤ歩きの旅に出た。
旅の途中で出合うメシもまた、旅の思い出だ
第1回目となる前回の記事では、3度目のネパールにして、ヒマラヤ3大ルートの中で最もローカル&マイナーなランタンルートのトレッキングの道のりと、そこで大石さんが出合った感動絶景を紹介した。
今回は、ネパールの美味いローカルグルメについて教えてもらう。「食は旅の大切な要素」と語る大石さんは、ネパールでどんな地元飯を楽しんだのか?
現地に行きつけ店もあるヤミツキめし「モモ」今回の旅、いや過去のネパールでの旅においても、文句なしのナンバーワンと大石さんが断言するのがモモ。
水牛の肉をミンチにしたものを野菜などと混ぜたバフと呼ばれる種を小麦粉の皮で包んだもので、中華料理でいうところの餃子だ。
「茹でたり揚げたりとバリエーションがある中、お気に入りはカトマンズのニューエヴェレスト・モモセンターという店の“蒸しモモ”です。そこのモモには酸味とスパイスを効かせたソースがかかっていて、これがクセになる。今回も滞在中に3回、合計約5人前ぐらい食べました(笑)」。値段は1人前9個入りで90ルピー(1ルピー=約1円)。
日本人にも馴染むネパールの国民食「ダルバード」ご飯を中心に、炒め物や薬味などがワンプレートに盛り付けられるダルバード。ネパールでは国民食であり、カトマンズではたいていのレストランで提供される。
「美味しかったのは、アチャールと呼ばれるスパイス風味の漬物と、サーグと呼ばれる青菜の炒め物。一見クセが強そうだけど、意外にも日本人好みの味でご飯がすすみます」。面白いのが、つけ合わせがなくなると勝手に継ぎ足してくれるところ。
ちなみに、つけ合わせに決まりはなく店によって異なる。首都であるカトマンズでは内容も豪華、標高3870mのキャンジンゴンパでは食材も限られるためやはり質素な内容だった。それは上の2枚の写真を見比べれば明らか。にも関わらず、価格はカトマンズで450ルピー、キャンジンゴンパで500ルピー。やはり山の上では少し割高なようだ。
パッと食べれて腹にたまるトレッキング飯の常連「チョウメン」いざトレッキングで山に入ると、たいそうな料理はもちろん望めない。そこで重宝するのが麺類。
炭水化物なのでエネルギーになり、腹持ちも良いというのも、トレッキング飯として理にかなっている。「山が深くになるにつれ、麺料理を食べる機会が増えます。よく出るのが、日本のソース焼きそばの味を薄くして、独特のスパイスを効かせたような味つけのネパールの焼きそば、チョウメンです」。
価格はカトマンズだと200〜300ルピー、トレッキング中の宿だと400〜500ルピーほど。「どこで食べてもだいたい美味しいし、特に具の限定はないようで、バリエーションが多いのも飽きなくてうれしいですね」。
氷点下のヒマラヤの朝、心と体を温める「トゥクパ」米の麺を食べることの多いネパール。このトゥクパも、米麺を使ったラーメンのような料理だ。
トレッキング初日、バンブーという村で大石さんが食べたトゥクパは、味は塩ラーメンに近く、青菜と玉ねぎが入っていた。「トゥクパはすごくシンプルでほっとする味です。麺は米の生麺だったり、日本でもあるようなインスタントの乾燥麺だったり。汁物はカラダが温まるので、朝方に食べることが多いです」。バンブー村での価格は400ルピーほど。
腹が減ったときの救世主「ベジフライドライス」野菜とともにご飯を炒める、まさにその名の通りなベジフライドライス。大石さんがシャブルベシの宿にて250ルピーで食べたものは、ライスにねぎに玉ねぎ、人参というシンプルな内容だったという。
「味も具も特に決まりはなく、薄味のものから濃いものまで、食べる店によってさまざま。なかにはケチャップを上からかけている店もありました」。その魅力を聞くと、「どこで食べてもとにかく量が多いこと(笑)。がっつり飯が食べたいときにはオススメですよ。ベジフライドライスはお腹にたまるので、歩く距離が長いときに重宝しましたね」。
いわば山の民のカロリーメイト「はちみつパンケーキ」長距離をひたすら歩くトレッキング中は、糖質がどんどんと消費されてゆく。そんなとき、大石さんが食べたくなるのが、このパンケーキ。
「パンケーキといってもとても薄く、イメージはクレープをやや厚くした程度。そこに蜂蜜をたっぷりかけて食べます。ヒマラヤ付近は蜂蜜が多く採れる地域で、素朴な甘みは疲れた体に沁みますし、絶品ですよ」。
ネパール旅のシメは「エベレストビール」で乾杯!トレッキング前、トレッキング中はアルコールを口にしない大石さん。理由はもちろん、体力確保のためだ。しかし、トレッキング後においては、地ビールを飲むことをひとつの楽しみにしている。
ネパールで有名な地ビールと言えばエベレストビールで、定番中の定番だ。「味は若干あっさりめ。アルコール度数も高くないので、1本飲んだくらいだと全然酔わない。なのでいつも気づけば本数が……(笑)」。
「旅においては、食も大切な要素です。地元の人が日頃から食べているような料理を食べるのが、旅の中でその土地の文化を理解するために、ある意味いちばんの近道だと思いますよ」。
大石さん、かつて東京のネパール料理店を訪れたことがあるというが、「やっぱり、旅の途中で、現地の景色と環境の中、現地の人に作ってもらったものを食べることが、いちばんの“味わい”なんだなと思いました」。そこに行かないと、同じ体験は味わえない。
「まあ、チーズが沢山かかったチョウメンを美味い!と食べたあとに、お腹を下したりもしましたが(笑)」、それも旅の思い出であり旅の余韻、そして次なる旅への動機になるのだ。
次回は、大石さんがネパール旅に持って行ったトレッキングギアと、買って帰ったお土産をご紹介。
大石 学=写真 安岡将文=文