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キッチンカーも、ゼロから学べ!
キッチンカーで売ることは当初から決めていた。
「やはり無名な料理ですから、こんな誰も知らないものをいきなりお店を構えて提供するのはハードルが高かったんです。最終的には日本に定着させるのが目標ですので、いずれにせよ知名度はあげないといけません」。
で、実はコシャリの再現と並行してキッチンカー修行も行なっていたのだ。エジプトからの帰国後、家の近所で出店しているキッチンカーを発見。即、店主にアタック! 「無給で構わないので働かせてください! 色々教えてください!」と。
「ゼロベースからの突撃」に関しては、須永司という人の大きな特徴なので、もはや驚かないかもしれないが、冷静に考えると、30代前半の(事業計画はあるものの)無職の男が(婚約者もいるのに)、ノーギャラで働こうというのだ。コシャリを学ぶときとまったく同じ構図だが、あちらはエジプト。なんだかんだいって海外での非日常的な修行体験。こちらは川崎。日常と地続きな、日々の生活の一環。よくそんな申し出ができたものだ。
「だって誰かに教えてもらわないと、何も知らなかったんですから(笑)。師匠は、キッチンカーの黎明期から15年ぐらい続けてこられた生き字引みたいな方で。キッチンカーに関することは全部、もう本当に何から何までそこで教えてもらいました」。

今使っているキッチンカーも、師匠のつてで? と尋ねると、須永さん相当な勢いで首を振った。
「ツテどころか、ほぼ全部です! 保健所に申請するのに必要な設備を教えてくれて一緒に買いに行って、内部のレイアウトも教えてくれて、設備工事もやってくれて。あると便利なものなんかの助言もくれて、改造に関しても、師匠が自分の仕事終わってから一緒にやってくれました。たぶん業者に頼んだら100万円以上かかるような設備工事とかも、師匠のおかげで全部安くあがりました」。
そして2016年3月「エジプトめし コシャリ屋さん」のキッチンカーは完成。
ボディに燦然と輝くロゴは、広告代理店のクリエイティブにいる大学の先輩によるものだった。肝心な出店場所は、大学での経験を踏まえてオフィスワーカーの多いエリアに絞り、師匠の助言も受けながら、日本最大級のモビリティサービス・プラットフォーム「Mellow」を利用することにした。
なお、婚約者とは、前年末に入籍。彼女は京都で飲食店を経営していたが、キッチンカーの完成をもって閉店。新婚生活とともに、本格的なコシャリ屋さん事業もスタートすることになった。
「僕、独立したときに、すごく肩に力が入っていたんですよ。“今日から俺は社長やぞ!”と。全部自分で動いて自分で判断して、一から十まで自分で責任持ってやらなアカン! そんな覚悟して始めたんですが、実際にはひとりでは何もできないことを痛感しました。会社にいたときよりもむしろ独立して初めて、色々な人に助けてもらえて仕事は成り立つんだな、ということがすごくわかりました」。



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