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多くの音楽好きにとって、グレタ・ヴァン・フリートをツェッペリンと比較せずに語ることは難しい。そもそも、かのロバート・プラント自身が、オーストラリアのネットワークテンのインタビューに対して、「デトロイトにグレタ・ヴァン・フリートっていうバンドがあってね。彼らこそ、レッド・ツェッペリンだよ」と語っている。「俺がよく知ってる人からスタイルを拝借してるけど、それに対して何ができるって言うんだい? まあ心配ないよ」。
グレタ・ヴァン・フリートのギタリスト、ジェイクも、ローリング・ストーン誌とのインタビューで「(ツェッペリンのギタリスト)ジミー・ペイジを1年間必死で研究した。彼の考え方がわかるくらいまで必死に」と語っている。

ロックを若者に「返した」

グレタ・ヴァン・フリートには、ツェッペリン以外にも異なるバンドの影響が感じ取れる。バッド・カンパニーやエアロスミス、サウンドガーデンなどだ。確かにトーンやリフなどは、こうしたグループの作品に似すぎているように聴こえるかもしれず、「ツェッペリンの真似」など揶揄の声もあがっている。
が、過去のサウンドに影響を受けることは大多数のロックバンドで起こっていることで、今のロックバンドが、どれだけ過去にまったく聴いたことのない、斬新かつ新しいサウンドを奏でられるというのだろうか。ブルースにまで歴史を戻せば、すべてのロックバンドは過去のサウンドにルーツがあることに気づくはずである。
「ツェッペリンを彷彿とさせるバンド」としては、ブラック・カントリー・コミュニオンがあるが、このバンドのドラマーの父親は、ツェッペリンのドラマーだったし、ボーカリストは短期間ブラック・サバスのボーカルを務めていたことがある。しかも、ブラック・カントリー・コミュニオンは平均年齢約50歳である。彼らは自分たちが若い頃聴いていたサウンドを奏でており、彼らのファンの大半もツェッペリンなどを聴いて育っている。
一方、グレタ・ヴァン・フリートは、多数のバンドの影響は感じられるものの、自分たちなりに「ロックする方法」を心得ており、影響を受けたサウンドを独自のスタイルに落とし込んでいる。そもそも、グレタ・ヴァン・フリートのファンは、両親、あるいは祖父母が聴いていた音楽をあまり知らないかもしれないし、ロック好きだったとしても、過去を掘り返すことに興味がないかもしれない。
グレタ・ヴァン・フリートのような音楽を、いったいいくつの若いバンドが創造しているだろうか。おそらくゼロだ。彼らは「熟年のもの」になっていたロックミュージックを若者に「返した」のである。
しかし、なぜグレタ・ヴァン・フリートは、彼らの世代のほかの若者のようにヒップホップやダンスミュージックの世界に入らなかったのか。それには、彼ら自身のルーツがある。


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