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非情のセッティング

さて今回のラウンドのコースセッティングは、大会終了直後ということもあり「 ダンロップフェニックストーナメント」のセッティングに限りなく近いものである。つまり、プロたちが戦ったコースとほぼ同様のセッティングでプレーするのだ。
ラフの長さ、ピン位置、グリーンの硬さ。果たして我々が通常ラウンドするセッティングとどれほど違うのか。怖さと期待が入り混じるスタートである。
「住吉」コースの1番は左の松林が深いパー5、468ヤード。フェアウェイ右サイドが狙い目だ。
パカーン。

なんとパーティ全員がフェアウェイキープのグッドショット。これぞトーナメント観戦の効能かと、幸先良いスタートを切ったのだが……。
結論から言えば、やはり名門は甘くなかった。
手入れの行き届いた美しい黒松林でセパレートされた各ホール。絨毯のような極上のフェアウェイ。ティグラウンドから見るとほとんどのホールは見通し良く、プレッシャーを感じることは少ないだろう。
しかしながら、きわめて巧妙な設計なのである。フェアウェイに点在する松が思いがけないスタイミー(障害物)となる。サイドバンカーは少ないがグリーン周りのガードバンカーが深い。そもそも両サイドの松林は一度入れてしまうとほとんどは「出すだけ」という密度だ。
広く深いガードバンカー。圧倒的なプレッシャーだ。
とはいえグリーンまでは、ミスをしなければ大きくスコアを崩すことはないかもしれない。それは逆に言えば、問題はグリーンのセッティングということ。まず、ピン位置がいやらしい。グリーン最奥だったり、下り傾斜の途中だったり、バンカーの近くだったり。まさにトーナメント仕様。
さらにグリーンの速さたるや。少々強めのパッティングでカップを外せば、たちまち2メートル、3メートルのオーバーである。また芝目も難しい。切れるように見えて切れない。切れないように見えて切れる。パットの感覚が失われていくようで脂汗がにじむ。いやもちろん、通常セッティングならここまでシビアではないだろうが……。
読めない、寄らない。“刈高3ミリ”の厳しいグリーン。
同行パーティは片手シングルからアベレージ100までというまちまちの実力であったが、いずれも前半9ホール終了時点で「いつもより5打は多く叩いている」との共通見解。非情なりトーナメントセッティング。いい感じにやられてクラブハウスでいったん昼食である。
「フェニックスカントリークラブ」を訪れた際には絶対に食べていただきたいのが「宮崎牛の牛丼」だ。それがこちら。
ケプカが大会期間中毎日オーダーした「宮崎牛の牛丼」。この”卵抜き”が「ケプカ丼」とも呼ばれている。
ケプカが大会期間中毎日オーダーした「宮崎牛の牛丼」。この“卵抜き”が「ケプカ丼」とも呼ばれている。
先にも触れたが、ブルックス・ケプカお気に入りの牛丼である。昨年度米ツアー賞金王のお気に入りである。うまいに決まっているのである。
利尻昆布、いりこ、サバ節でとった濃厚なダシに九州独特の甘めのしょう油を合わせた特製のつゆで個性を発揮。これが宮崎牛バラ肉の旨味を受け止めて増幅させる要因と思われる。ふわっと仕上げた卵とじ仕様も最高だ(ケプカは卵抜きだが)。
昼食を終えたら、後半のスタートまでは伝統あるクラブハウス内を見て回ってほしい。
セベ・バレステロス、トム・ワトソンから松山英樹まで、歴代チャンピオンのポートレートは圧巻。
古き佳き英国調をイメージした重厚な空間。「チャンピオンズ・メモリアルコーナー」には、1974年の第1回大会から現在までの「ダンフロップフェニックストーナメント」王者たちのポートレートと、寄贈されたゴルフクラブが並ぶ。
タイガー・ウッズや尾崎将司ら名プレーヤーたちのブロンズ製の手形も展示。触ってもOK!
「ゴルファーたるものプレーのみならずゴルフの歴史も勉強すべき」と言ったのは稀代のゴルフエッセイスト、故・夏坂 健である。メモをとる必要はないと思うが、往年のプレーヤーたちの輝かしい姿は必見。このコースが培って来た歴史に思いを馳せていただきたい。
 

ゴルフに臨む気持ちもレベルアップ

さて後半である。プレーに対する意欲が失われたわけではないが、美味い食事をとりコースの伝統に触れると、スコアに一喜一憂するのは「どうも違う」と感じ始めた。汲々とプレーするのではなく、今のゴルフをゆったりと楽しみたい。そんな気持ちになったのである。
池越えのショートホール。スコアにとらわれず改めて景色を眺めれば、しみじみとその美しさを味わうことができるはず。
後半も難しかった。だが「ゴルフをする喜び」を感じながらプレーすることができた。
「冬こそラウンドして上手くなる!」と冒頭に書いた。確かに通年プレーすればレベルアップが望めるに違いない。だが、単にゴルフの腕前を上げるためだけにこのコースを訪れるのは少々もったいない。
美しい自然のなかでゴルフという偉大な“遊び”を楽しむ。スキルアップに加え、ゴルフそのものに対する考え方も、もう一段階レベルアップさせてくれるコース。それが「フェニックスカントリークラブ」であったのだ。
[施設概要]
フェニックスカントリークラブ

電話番号:0985-21-1301
住所:宮崎県宮崎市塩路浜山3083
https://golf.seagaia.co.jp
【次回は……】
「ゴルフ旅に打ってつけな「フェニックス・シーガイア・ リゾート」の魅力」へ続く
 
小林孝至=撮影 加瀬友重=取材・文


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