連載「オーシャンズ X :幸せな離婚編」vol.1
「離婚したんだ」と話せば大抵は憐憫の眼差しを向けられるだろう。だが、長い目で見ると必ずしも不幸な出来事とは限らない。バツは見方を変えるとX(エックス)という“未知数“を表す記号にもなるのだ。1/3組が離婚すると言われている今、本連載では「幸せな離婚」について論究していく。
厚生労働省が発表している人口動態統計によると、2018年の婚姻件数は59万組であるのに対し、離婚件数は20万7000組。たしかに離婚のハードルは低くなっているようだが、背景にはさまざまな要因があるのだろう。
まずはリアルな実態調査からはじめよう、ということで、訪れたのは夫婦問題カウンセラーの元。年間1000件以上の相談を受ける高橋知子さんは、離婚回避や夫婦関係の修復にも長けた夫婦問題のスペシャリストだ。
高橋さんに離婚に悩める夫婦のリアルな実態を聞いてみると、こんな背景が浮き彫りになってきた。
下がる離婚のハードル。その理由は“完成品”を求める今の価値観「ご相談者の多くは、離婚したいのではなく関係を修復する手立てを探していらっしゃいます。パートナーに離婚を申し立てられて、本人は離婚したくないという形で1人でお見えになる方も珍しくありません」。
修復出来るカップルも多い中、修復を試みながらも、納得して離婚という選択をする相談者も数多く存在するという。
「我慢を重ねて誰かと生活するくらいなら、別々に生きる選択をする人が増えています。外に出れば楽しいことはほかにいっぱいありますからね。昔は、未熟だからこそお互いに成長していこう、という考えが根付いており、それは結婚の醍醐味のひとつだったはず。でも出来上がったものに囲まれて生きている今の時代、パートナーにも“完成型”を求めがちなんです。“どうして私が夫を育てなきゃなんないんですか”、“どうして妻に全部合わせなければならないのか”という言葉を聞くことも非常に多い印象です」。
具体的に離婚原因となる主な項目は、お金・時間の価値観、親戚付き合い、子育てに関すること。なかでも、お金・時間の価値観の相違が引き金となるケースが目立つという。
「男性側は価値観が違うならそれはそれでいいんじゃないかと思う人が多いんです。ただ女性は“あなたは間違っている、おかしいでしょ?”と、相手の価値観を正そうとしがちです。これがエスカレートすると、男性側が離婚を考えるようになる傾向がありますね」。
責める・責められるのスパイラルに陥ると、そこから抜け出すには莫大なエネルギーを消費しそうだ。
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