テーマに合わせた10曲を「iTunes」から選び、毎月リリースしていくコーナー。
セレクターは、ビームス創造研究所 クリエイティブディレクターであり、ビームス レコーズ ディレクターの青野賢一氏。
「楽器」というと、皆さんは何を思い浮かべますか? ピアノ、ギターといったところが一般的でしょうか。あるいはご自身がやっていた(やっている)楽器が浮かぶという方もおられるかもしれません。
いずれにせよ、ポピュラーミュージックで使われる楽器にはそんなに変わったものはないのですが、世界に目を向けると個性的な楽器がたくさんあります。今回はそんなユニークな楽器を用いた音楽をピックアップ。民族楽器や伝統楽器が中心ですが、「オークラウロ」のような発明品も!
航海日誌 / オークラウロ・プロジェクト尺八を嗜んでいたホテルオークラの創業者、大倉喜七郎。好きが高じて、なんと昭和初期に究極の尺八として「オークラウロ」なる楽器を考案、製作しました。このオークラウロを現代によみがえらせたオークラウロ・プロジェクトのアルバムから一曲どうぞ。
East / Bei Biei & Shawn Leeビリー・ポールの1971年のアルバム『Going East』に収録のレアグルーヴ「East」。これを中国の伝統楽器であるグーチェン(古箏)でカバーした傑作ナンバー。グーチェンを奏でるBei Beiは中国の女性アーティストでこの楽器の研究者でもあります。
Woodland Dance / Joshua Messickジョシュア・メシックは、全米ハンマーダルシマー・チャンピオン。ハンマーダルシマーとは打弦楽器で、ピアノの前身とされるものです。これはイランの「サントゥール」などと同じもので、12世紀頃に北アフリカ経由でヨーロッパに広まりました。
energy flow – rework / U-zhaan & Ryuichi Sakamotoご存知、坂本龍一の大ヒット曲「energy flow」を、タブラ奏者のU-zhaanと坂本本人がリ・ワークしたナンバー。タブラは北インドの古典音楽の伴奏楽器として知られるパーカッションですが、U-zhaanはそれを様々な音楽とマッチングさせています。
Bohemian Rhapsody / Jamie Dupuis一聴すると、クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」のアコースティック・ギターによるカバーですが、これは普通のギターではなく、6弦ギターにさらにフレットなしの開放弦を張った「ハープギター」の音。特徴的なルックスをぜひ画像検索で。
The Blue Tit’s Spring Song / Sinikka Langelandシニッカ・ランゲランはノルウェーのカンテレ奏者/シンガー。「カンテレ」とはフィンランドに古くから伝わる打弦楽器で、ハンマーダルシマーなどの仲間といえそうなものです。伝統的な楽器ですが、本作はコンテンポラリーな内容で聴きやすいかと。
Naamwin Yelle Nibe / Barry Olsen, Kakraba Lobi & Valerie Naranjoおそらく誰もが知っているであろう木琴は、世界各地で様々な呼び名と形状を持っています。ガーナの木琴は「コギリ」。演奏は、世界的なコギリの名手であったカクラバ・ロビ。プリミティブな響きがなんとも心地よいミニマルな一曲です。
Gnossienne No. 3 / Didier Françoisヴァイオリンのような音色のこの楽器は「ニッケルハルパ」というスウェーデンの古楽器。中世の頃から伝わるものだそうです。見た目もヴァイオリンに似たところがありますが、最大の特徴はピアノのように鍵盤が付いているところ。曲はサティのカバーです。
プレリュード / Ballaké Sissoko & Vincent Segal今回取り上げてきた楽器の中では比較的よく知られているように思うのが「コラ」。アフリカの楽器で、ハープのような音色が特徴です。そのコラの第一人者と称されるバラケ・シソコとチェロ奏者のヴァンサン・セガールによるデュオ作。
ホヨル・ノタギーン・エルフ / タラブジャビーン・ガンボルド最後に登場する楽器は「声」です。モンゴルの伝統的な唱法である「ホーミー」は、一人で二種類の声を一度に発声するもの。地声と倍音成分がうねりを生み、まるで何かの楽器が奏でるドローンのような印象です。人間の身体ってすごいですね。
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青野賢一1968年東京生まれ。ビームス創造研究所 クリエイティブディレクター、ビームス レコーズ ディレクター。ファッション&カルチャー軍団ビームスにおける“知の巨人”。執筆やDJ、イベントディレクションなど多岐にわたる活動を展開中。