テーマに合わせた10曲を「iTunes」から選び、リリースしていくコーナー。
セレクターは、ビームス創造研究所 クリエイティブディレクターであり、ビームス レコーズ ディレクターの青野賢一氏。
前回
女性ボーカルの特集をした際に、「いつか性差を超えた存在の人でまとめてみたいです」と言ったところ、「じゃ、次回やりましょう!」となり実現したのが今回のセレクション。色々な角度から外見や性別にとらわれない表現をしているアーティストをピックアップしてみました。
選び終えて気づいたのは、彼、彼女たちの音楽はどんな人が聴いてもポジティブな気持ちになるんだということ。つまずいたときや落ち込んだり悩んだときに、そっとあなたの背中を押してくれるはずです。
I Need You / Sylvester「Over and Over」や「You Make Me Feel(Mighty Real)」といったディスコヒットで知られるシルヴェスター。1980年リリースのアルバムのオープニングを飾るこの曲も黒人ゲイディスコで人気でした。ベースラインとシルヴェスターのファルセットが最高。
Are You Ready For Love (Full Length 1979 Version) / Elton John「サー」の称号を持つエルトン・ジョンは、2014年に長年連れ添ったパートナーと同性婚を果たしました。ご存知のように数々の輝かしいヒット曲を持つ彼ですが、その楽曲はたくさんの人を勇気づけてきたのではと思います。ポジティブなこの曲のように。
Unlimited Capacity for Love / Grace Jones角刈りジャケも凛々しいグレイス・ジョーンズの1982年のアルバム『Living My Life』からの一曲。長身と鋼のような肉体美を誇り、ファッションモデルとしても活躍した彼女は、性別を超越した格好よさがあります。リズム隊はもちろんスライ&ロビー。
Snatched for the Gods / RuPaul世界一有名なドラァグクイーンといえば、ル・ポールでしょうか。2017年、20年以上の付き合いとなる男性と結婚を発表したことでも話題になりました。アルバムもたくさん出していますが、この曲は1996年の『Foxy Lady』から。ナイス’90sハウス!
Queen / Matthew Herbert (“A Fantastic Woman” O.S.T.)第90回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『ナチュラル・ウーマン』は、自分を偽らずに生きるため、差別や偏見に毅然と立ち向かうトランスジェンダーの女性のストーリー。マシュー・ハーバートが手がけた抜群に美しいサントラからハウス・チューンを。
Perne-A-Gyre / Klaus Nomi1983年、39歳の若さでエイズにより他界したクラウス・ノミ。白塗りメイク、アヴァンギャルドなヘアスタイルと衣装は一度見たら忘れられない存在感です。オペラ歌手のようなカウンターテナーをバリバリのニューウェーヴに仕立てた彼の音楽は今も輝いています。
TVC15 / David Bowieデヴィッド・ボウイが『サタデーナイト・ライブ』出演時、前出のクラウス・ノミをコーラスに従え、自身もタイトスカートのツーピース姿で歌ったのがこの曲。思えばボウイもずっとアンドロギュノス的存在ではなかったでしょうか。
メケ・メケ(2013年版) / 美輪明宏2018年、名誉都民に顕彰された美輪明宏は、シャンソン歌手として現在でも精力的に活動しています。この曲は元々は1957年に発表して一躍注目を集める契機となった(当時は丸山明宏名義)カバー曲ですが、それを自身でリメイクしたバージョンです。
Lili Marlene / Marlene Dietrich映画『モロッコ』(1930)の中で、シルクハットにボウタイという「男装の麗人」の呼び名がぴったりの姿を披露したマレーネ・ディートリヒ。性別にとらわれた見方を避けるため、映画の中だけでなくパンツスーツなどメンズ服を着用していました。
The Sound of Music / Conchita Wurst & ウィーン交響楽団2014年の「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」で優勝を果たしたコンチータ・ヴルスト。「ヒゲ面の美女」などとも称されていますが、外見や性別を超越するということを身をもって表現し、様々な立場の人に勇気を与えています。抜群の歌唱力!
<プロフィール>青野賢一1968年東京生まれ。ビームス創造研究所 クリエイティブディレクター、ビームス レコーズ ディレクター。ファッション&カルチャー軍団ビームスにおける“知の巨人”。執筆やDJ、イベントディレクションなど多岐にわたる活動を展開中。