テーマに合わせた10曲を「iTunes」から選び、リリースしていくコーナー。
セレクターは、ビームス創造研究所 クリエイティブディレクターであり、ビームス レコーズ ディレクターの青野賢一氏。
紳士という言葉に人が抱くイメージはどういったものでしょう。素敵にスーツを着こなして立ち振る舞いも優雅、といった外見的な部分を想像する方もいるでしょうし、人との接し方に「紳士的」を見る場合もありそうです。
私が考える紳士はどうかといえば、スタイルを持ちつつも柔軟でいたり、「これだけはやらない」というこだわりを持っている人物、といったところ。今回はそんな紳士像を念頭に置いて、ジェームズ・ボンドからクールジャズの名演奏まで選んでいます。これを聴けばあなたも紳士!?
From Russia with Love / John Barry映画『007』シリーズのジェームズ・ボンドは紳士としてのお手本のひとり。もちろん、架空の人物ですから、現実世界に転用する際は色々とアレンジが必要なんですが。この曲はシリーズ2作目(ボンドはショーン・コネリー)の『007 ロシアより愛をこめて』から。
(Satis) Faction / Charlie Watts meets The Danish Radio Big Band紳士、音楽でまず思い出すのはチャーリー・ワッツでしょうか。ご存知ローリングストーンズのドラマーですが、ジャズに傾倒しているのはよく知られるところ。デンマークを代表するビッグバンドと共演したライブ録音盤から、ストーンズのカバーです。
Gardenia / 加藤和彦チャーリー・ワッツが英国代表ならさしずめ日本代表は加藤和彦。スタイルを持ちながらも柔軟でさりげないところがたまりません。今回は1978年にリリースのアルバム『ガーディニア』からタイトル曲をピックアップ。高橋幸宏+後藤次利のリズム隊がすごい!
紳士同盟 / 薬師丸ひろ子映画関連でもう1曲。こちらは薬師丸ひろ子主演の1986年作『紳士同盟』の主題歌です。当時、結構ヒットしていたような。映画の方は信用詐欺とラブストーリーをミックスした作品。一見紳士、実は詐欺師というのは昔からよくあるモチーフですね。
Gentlemen Take Polaroids / Japan1980年発売の同名アルバムのタイトル・チューン。邦題は「孤独な影」です。デヴィッド・シルヴィアンのボーカルは安定のダーク&ウェットですが、サウンド的には聴きやすいニューウェーヴ。歌詞に英国ジェントルマンのカントリーサイド志向が出ています。
Pretenderness / Chilly Gonzales本人の佇まいや立ち振る舞いが紳士的かどうかはさておき、チリー・ゴンザレスの『Solo Piano』シリーズは親密さと気高さ、美と醜が同居した実に素晴らしい作品です。真摯にピアノと向き合うゴンザレスの姿勢、紳士も持ち合わせていたいものですね。
Moon Dreams / Miles Davis破天荒な人生を送ったといわれる人が多い、昔のジャズメンたち。しかしそのサウンドはキリッとした緊張感があって、背筋が伸びる印象があります。中でもクールジャズと呼ばれる抑制の効いた演奏スタイルは特にそう。マイルスのこの曲などが代表的です。
Englishman in New York / Sting紳士といえば英国紳士を思い浮かべる方も多いでしょう。では、その英国紳士がニューヨークに住んだらどうか、というのがこの曲。価値観の違いが生きづらさにつながるというのはいつでもありそうですが、そこで自分を貫く意志が大切だとこの曲は教えてくれます。
(What a) Wonderful World / Bryan Ferryブライアン・フェリーは伊達男といった印象ですが、1977年の『Another Time, Another Place』のジャケットの洒脱な白タキ姿を見ると、これも紳士の在り方のひとつといえそうです。そのアルバムから、ノリのいい一曲をどうぞ。
Tighten Up (Japanese Gentlemen Stand Up Please) / Yellow Magic Orchestraしれっとお行儀よくしているだけでは紳士とはいえません。ときには立ち上がる!ときには踊る!ということでラストはアーチー・ベル&ザ・ドレルズのヒット曲をYMOがカバーしたバージョンで。ジャーパニーズジェントルメーン、スタンダッププリ~ズ!
<プロフィール>
青野賢一1968年東京生まれ。ビームス創造研究所 クリエイティブディレクター、ビームス レコーズ ディレクター。ファッション&カルチャー軍団ビームスにおける“知の巨人”。執筆やDJ、イベントディレクションなど多岐にわたる活動を展開中。