職場の20代がわからない Vol.29
30代~40代のビジネスパーソンは「個を活かしつつ、組織を強くする」というマネジメント課題に直面している。ときに先輩から梯子を外され、ときに同期から出し抜かれ、ときに経営陣の方針に戸惑わされる。しかし、最も自分の力不足を感じるのは、「後輩の育成」ではないでしょうか。20代の会社の若造に「もう辞めます」「やる気がでません」「僕らの世代とは違うんで」と言われてしまったときに、あなたならどうしますか。ものわかりのいい上司になりたいのに、なれない。そんなジレンマを解消するために、人材と組織のプロフェッショナルである曽和利光氏から「40代が20代と付き合うときの心得」を教えてもらいます。
「職場の20代がわからない」を最初から読むそう、これからは「基本的には」理系の時代
残念ながら(?)、そうです。読者の皆さんもお感じになっておられる方も多いのではないかと思うのですが、「理系的センス」を持った人を、多くの会社が望むようになっています。昔、ビル・ゲイツが「ギーク(ひとつのことをオタク的に極めていくような人。主に理系専門職を想定)には優しくしなさい。彼らの下で働く可能性は高い」と言ったという話がありますが、既に現実はそういう世の中です。
人事のようなヒューマンな仕事でさえ、「人事エンジニア」「人事データサイエンティスト」などと呼ばれるような職種が出てきました。採用選考や評価、配属など、これまで人の感性で対応していたようなことを、何らかの形できちんとデータを取って、それを分析して対応していくようになっています。
それどころか、それを人間ではなくAIがやってしまうような時代にもなってきていますので、そのAIのコントロールできるようなレベルの人でなければ、今まで自分がやっていた仕事を奪われてしまう可能性すらあると、多くの人が薄っすらと不安に思っているのではないでしょうか。
正確に言えば、「科学的思考」
ただ、そもそも「文系」「理系」という分け方自体が風化してきています。心理学はアメリカでは理系的な学問と思われていますが、日本では文系学問と思われています。心理学は実際にはさまざまな実験を行いますし、そこでは統計学を駆使しますので、まさに「理系的センス」は必要です。経済学でも大変難しい数学を使いますし、社会学でも同様です。
そう考えると、学部が文系か理系かということではなく、勉強をしているなかで、上記のような理系的なリテラシーを鍛えたかどうかということが重要です。
「理系的センス」をもう少しブレイクダウンすると、「世の中の現象を抽象化して捉えて、分析することで一般的な法則を発見する」「そのために、仮説検証を繰り返す(いわゆるPDCA)」という科学的思考と言ってもよいかもしれません。
この科学的思考が重視されるようになってきたのは、インターネットが浸透してリアルな世界がデジタルで表現されるバーチャルな世界に置き換わったり、さまざまなセンサーが発達してデータを数字で取れるようになり分析が可能となったりしたことで、この科学的思考が発揮される分野が実験室から世の中全体に広がったことが要因でしょう。
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