OCEANS

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――クラシック音楽といっても、オーケストラだけでなく、室内楽とかピアノとか、膨大な曲数がありますよね。その中から、売れる録音を見極めていらっしゃると……。ご自身が担当した限定商品で、あえてナンバーワンを決めるならどれでしょう。
妥協なしで最初に作れたのが、2010年6月4日発売の「ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番、交響曲第5番『運命』」です。バーンスタインの指揮ですね。過去にCDでも出ているんですけど、ジャケットがLPのときとは違っていたり、別の録音とカップリングされていたりなど、いい出方はしていませんでした。
北村さんが手掛けたオリジナルCDの一部。ボックス作品も企画している(写真:梅谷秀司)
アムネスティの子供たちを助けるチャリティーコンサートの録音なので、権利関係が難しかったのですが、ねばり強く交渉してLPと同じジャケット・曲構成で出すことができました。反響も大きく、数千枚売れました。ライブで非常にいい演奏ですし、ファン目線で出せたなと思います。
――バーンスタインの指揮でベートーベン「運命」というと、クラシックファンには「王道中の王道」かもしれません。同じ組み合わせの録音は何種類もありそうですが……その中で、この録音こそが売れるというのは、どうやって見つけ出せるのか……。
北村さんが過去リリースしたオリジナル作品の一覧。膨大な数だ(写真:梅谷秀司)
バースタインは好きなので、何を録音しているかは大体、頭に入ってるんです。このバーンスタインのLPは持っていませんでしたがデータとしては知っていました。CDでの録音は聴いています。バーンスタインはこのあとウィーンフィルとも同じ曲を録音しているんですが、僕はなんか、チャリティーだったアムネスティのほうが好きなんですよ。
CDでは出し方の問題もあって、聴いている人が少なかったと思うんです。ですので、需要があるなと思っていました。
――頭に入っているデータ量が尋常じゃない……ように思えるのですが、例えばベートーベンの「運命」の録音は、どのくらいあるのでしょうか。
多分、世界中でいま出ているもので300~400種はあると思うんですが、そのうち3分の2以上は聴いていると思います。曲の長さは30~40分くらいですから、結構聴いてますね。
 

好きだから、知識は自然に入ってきた

――どうやって、その膨大な知識を頭に入れられたんですか。
中学1年のころからトロンボーンをやっていまして、音楽は身近な存在でした。学生の頃は図書館で借りたり、人から借りたり、FMで聴いたり、本を買って知識を入れていました。浪人時代もそればっかりやっていて。好きだから、すごく頭に入ってくるんです。
学生時代にタワレコでバイトをはじめました。これで、いっぱい聴けるぞと。当時はインターネットがないので、店舗に電話帳みたいなカタログがあったんです。曲ごとにどんなCDがあるのか書いてあるもので、お客様に聞かれるたびに調べていたので、自然に知識が増えていきました。


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