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近年、オタクに世間が優しくなったように思う。年号が平成に変わったばかりのころ、中学生だった筆者は家に帰るとすぐにパソコンの電源を入れ、ゲームやプログラミングに興じていた。けれども、学校ではそんな話は一切しなかった。オタクがバレたらいじめられると思い込んでいたのだ。ところが、先日「私もオタクなんで、友だちになってください!」と言われ、面くらった。隠すどころか、自らアピールするなんて……。
社会人となったオタクたちは、いま、オタクであることを隠していないのではないだろうか。逆に、その深い知識を生かし、楽しく仕事をしているのかもしれない。趣味を生かしてイキイキと働く、オタク仲間に会ってみたい。
第1弾はタワーレコード(以下、タワレコ)。全国に79店舗とオンラインショップを抱える大手CD販売店だ。筆者はクラシック音楽が大好き。タワレコに行き「マーラーの交響曲第6番でオススメはどれですか?」と聞くと「こっちはこういう感じで、こっちは……」と何種類もあるCDをどんな演奏なのか、懇切丁寧に解説してくれる。この会社は絶対に“スゴイ”と日頃から思っていた。
今回は、専門家ぞろいの社員の中でもえりすぐりの“クラシック音楽マニア”だという商品本部クラシックバイヤー北村晋(すすむ)氏にお話を聞いた。いったいどんなマニアが、どんな仕事をしているのだろうか。
膨大な知識を使って「売れる」CDを見極めている
――タワレコの店員さんの音楽知識は、かなりすごいのではないかと常々思っていました。北村さんは秋田店や神戸店の店長を経て、現在は本部・クラシカルバイヤーをされているということですが、どんなお仕事なのでしょうか。各店舗にもバイヤーはいるのですが、私はタワレコの店舗とオンラインショップのクラシック音楽部門全体を取りまとめています。おそらく、タイトルは全部で数十万になると思います。
それ以外にタワーレコード限定商品の企画をしています。クラシック音楽の場合、レコード会社さんが音源を持っているのですが、すべてが商品化されているわけではありません。メーカーが出しているカタログを見て「何年のこのコンサートの録音だったら絶対売れる」など判断して、独占でメーカーに作ってもらいます。年間平均で100タイトルくらいでしょうか。担当は私1人です。
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