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美味しい、まずい、あったかい……。それだけじゃないコーヒーの魅力
深煎りにこだわり、濃厚なコーヒーを提供している丸福珈琲店。荒川さんは、自宅でより店味に近づけるためのワザも教えてくれた。
「いつもスプーン1杯分の豆を挽いている人は、それを2杯に。さらにペーパーフィルターを二重にして、ゆっくりと輪を描くようにお湯を注いでみてください。これにより液体の落ちる速度が遅くなり、蒸らしの時間が長くなります。コーヒーの風味を余すところなく引き出せるので、濃厚な一杯に仕上がります」。
ただし、重要なのは“自分だけの一杯”を見つけることだという。
「もしこれで濃すぎたら、フィルターを1枚にしたり、豆の分量を調整したりしてもOKです。コーヒーには飲む楽しさだけでなく、淹れる楽しさもある。レシピにとらわれる必要はありません。試行錯誤して“自分の味”にたどり着いた瞬間は格別ですよ」。
コーヒーの持つ「飲むこと」以外のさまざまな魅力。丸福珈琲店では、こうした奥深さを大切にしている。

「コーヒーって不思議なもので、同じ人が同じように淹れても、その日の気分や体調によってまったく別の味になる。いつもより渋いと感じたら、それは疲れているサインかもしれません。コーヒーを日常に取り入れると、そんなふうに自分を見つめるヒントをくれる瞬間があります。美味しい、まずい、あったかいだけじゃなく、コーヒーと向き合う時間を大切にすること。それこそが、真のコーヒーの楽しみ方だと思っています」。
美味しさを超えて、心の琴線に触れてくるコーヒーという存在。誰よりも正直な彼らを通じて、自分の心と会話する。丸福珈琲店の歴史ある一杯で、そんなひとときを過ごしてみるのも悪くない。
佐藤宇紘=取材・文 武田侑也=撮影


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